SUMMARY
「少額で大きな取引ができる」「株価の下落局面でも利益を得られる場合がある」 など信用取引には、通常の株式取引にはない特徴があります。一方で、投資額以上の損失が出るリスクもあります。本記事では、信用取引のメリットやリスク、信用取引の流れを詳しく解説します。
信用取引とは
信用取引は、証券会社からお金や株式を借りて株式投資を行う方法です。信用取引では、手持ちの資金以上に株式を購入したり、保有していない株式を売却したりすることができるため、投資の幅が大きく広がります。
お金や株式を借りる際には、担保として一定のお金(委託保証金)や株式(代用適格有価証券)などを証券会社に差し入れる必要があり、その範囲内で取引ができます。ただし、借りたお金や株式に金利などの費用が発生します。
なお、年齢や投資経験などによって、信用口座を開設できない場合もありますのでご留意ください。
お金や株式を借りる際には、担保として一定のお金(委託保証金)や株式(代用適格有価証券)などを証券会社に差し入れる必要があり、その範囲内で取引ができます。ただし、借りたお金や株式に金利などの費用が発生します。
なお、年齢や投資経験などによって、信用口座を開設できない場合もありますのでご留意ください。
信用取引に関連する用語
制度信用取引と一般信用取引
信用取引には、「制度信用取引」と「一般信用取引」の二つがあります。「制度信用取引」は、取引所が定めた規則に従って行う取引で、6ヵ月以内に決済(返済)する必要があります。取引できる銘柄も取引所が決めています。一方、「一般信用取引」は各証券会社が独自のルールで提供する取引です。返済期限が長いものや期限のないものもあり、取引できる銘柄も証券会社が独自に定めています。
建玉(たてぎょく)
建玉とは、信用取引において決済が済んでいない銘柄のことです。買いの場合は「買建玉(かいたてぎょく)」、売りの場合は「売建玉(うりたてぎょく)」と呼びます。● 買い建て:証券会社から資金を借り入れて、株式を買う取引
● 売り建て:証券会社から株式を借り入れて、株式を売る取引(空売り)
例えば、信用取引で100株を買って、まだ売っていない状態が「買建玉」です。反対に、借りた株式を売って、まだ買い戻していない状態が「売建玉」です。
委託保証金率と委託保証金維持率
信用取引を行うために必要な担保のことを、「委託保証金」と呼びます。取引額に対して必要な担保の割合を「委託保証金率」といい、法令上30%以上が必要です。また、建玉を維持するために最低限必要な委託保証金の割合を「最低委託保証金維持率」といいます。委託保証金が最低委託保証金維持率を下回ると、追加で担保を預ける必要(これを「追証(おいしょう)」といいます。)があるため、日々委託保証金維持率を確認することが大切です。
追証(おいしょう)
信用取引などにおいて、委託保証金が最低委託保証金維持率を下回った場合に追加で差し入れなければならない保証金のことです。現引き・現渡し(建玉の決済方法)
● 現引き:買建玉を決済する際に、株式を売却せずに借りたお金を現金で証券会社に返済して決済する方法● 現渡し:売建玉を決済する際に、同銘柄・同株数の現物株式を証券会社に渡して決済する方法
信用取引のメリット・リスク
メリット
小さな資金で大きな投資ができる(レバレッジ効果)
手元の資金以上の取引ができることが信用取引の大きなメリットです。これを「レバレッジ効果」と呼び、少ない資金で大きな取引を行えます。手元資金の何倍の取引が可能かは、証券会社や取引コースによって異なります。例えば、みずほ証券で1,000万円の資金を担保に信用取引を行う場合、オンライン信用取引では約2.85倍の約2,850万円(1,000万円÷委託保証金維持率35%)まで、対面取引では約3.33倍の約3,330万円(1,000万円÷委託保証金維持率30%)まで投資できます。(2024年12月末時点)

株式を持っていなくても「売る」ことができる(空売り)
信用取引では証券会社から株式を借りて売ることができます。これを「空売り」といいます。通常の株式投資は、「買い」から取引に入りますが、信用取引は「売り」から入れるため、株価が下落する局面でも利益を得られます。
同じ銘柄を1日に何度も売買できる
信用取引は差金決済(売買価格の差額のみによる決済)であるため、同じ資金(保証金)を利用して、1日に何度も同じ銘柄を売買できます。現物取引では差金決済ができないため、同じ資金で同じ銘柄を何度も売買することはできません。リスク
予想と反対に株価が動いた場合、大きな損失を出す可能性がある手元資金の数倍まで取引できるため、予想通りに株価が動いた場合は、通常の株式投資よりも大きな利益を得られることがある一方、株価が予想に反した動きをした場合は大きな損失が発生する可能性があります。
例えば、みずほ証券のオンライン信用取引で1,000万円の資金を担保に2,850万円分の信用取引の買い建てをした後、株価が30%下がった場合、855万円(2,850万円×30%)の損失が生じ、投資資金(担保)は1,000万円から145万円まで減ってしまいます。さらに価格が下がると、投資金額以上の損失が出る可能性があります。また、建玉の評価損が大きくなったり、担保とした株式の価格が下がったりすることで、委託保証金が最低委託保証金維持率30%(みずほ証券のオンライン信用取引の場合)を下回った場合は、追加の保証金(追証)が必要になります。なお、追証が発生した場合、追証発生日の翌営業日までに保証金の差し入れが必要です。

現物取引との主な違い
信用取引には、「レバレッジ効果がある」「空売りができる」「同じ銘柄を1日に何度も売買できる」などのほかにも、いくつか現物取引と異なる点があります。
現物取引にはない費用が発生する
現物取引の場合、取引にかかる費用は「委託手数料」のみですが、信用取引では「委託手数料」に加えて「信用取引金利」「名義書換料」「貸株料」「品貸料(逆日歩・ぎゃくひぶ)」「信用管理費」等が必要です。「信用取引金利」には、買建玉を保有する間にかかる買方金利が、売建玉には売方金利があります。また「名義書換料」は買建玉に対して発生し、買建銘柄が決算期を迎えた場合にかかります。
売建玉に対して発生するのが「貸株料」「品貸料(逆日歩)」です。証券会社から借りた株式に対する借り賃が「貸株料」、株不足になった場合に株式調達コストとして発生するのが「品貸料(逆日歩)」です。
買建玉、売建玉ともにかかるのが、新規建の約定日から1カ月経過ごとに発生する事務管理費用の「信用管理費」です。
これらの費用は株価の変動とは関係なく発生し、建玉を長く持つほど費用も増えます。
買建 借りた資金で株 式を買う |
売建 借りた株 式を売る |
|
---|---|---|
株式委託手数料※1 | 支払い | 支払い |
信用取引金利 | 支払い | 受け取り※2 |
品貸料(逆日歩)※3 (制度信用取引のみ) |
受け取り | 支払い |
信用管理費 | 支払い | 支払い |
貸株料 | - | 支払い |
名義書換料 | 支払い | - |
- 株式委託手数料は、現物取引と同様に売買の際に発生します。
- 信用取引金利について、売建の場合は理論的には金利を受け取れる立場になりますが、実際の取引で、金利の受け取りは発生しないことが一般的です。
- 市場の状況に応じて証券金融会社が利率を決定。
配当金や株主優待の取り扱いが異なる
現物取引では株主として配当や株主優待等の権利を得られますが、信用取引の場合は異なるため留意が必要です。権利付最終日をまたいで買建玉を保有している場合は、名目上の株主である証券金融会社や証券会社から配当金相当額を受け取れます。逆に売建玉をしていた場合は、配当金相当額を支払わなければなりません。
買建玉を保有していても株主優待を受けることはできません。
信用取引の流れ
信用取引とは、株式を買い付けた場合には借りた買付代金を、売り付けた場合には借りた株式を、それぞれ証券会社に返済する必要があります。そのため、資金や株式を借り、売買を行い、建玉を決済するまでが一連の取引の流れとなります。
ここでは、返済期日(決済の期限)のある制度信用取引における、信用取引の流れを紹介します。
買いから信用取引を始めた場合、返済期日までに買建玉を決済する必要があります。買建玉の決済方法には「売り返済」と「現引き」の2つがあり、いずれかの方法で決済を行うことになります。

売りから信用取引を始めた場合、返済期日までに売建玉を決済する必要があります。売建玉の決済方法には「買い返済」と「現渡し」の二つがあり、いずれかの方法で決済を行うことになります。
ここでは、返済期日(決済の期限)のある制度信用取引における、信用取引の流れを紹介します。
信用取引の買いから始める場合

売り返済
買建玉を売却し、その売却代金で借り入れた買付代金を決済する方法です。売却代金から借入金の返済額と諸経費を差し引き、その差額が損益になります(利益の場合は差額を受け取り、損失の場合は返済額が不足するため差額を追加で支払う)。現引き
買い付けた株式を売却せずに、借り入れた買付代金と諸経費を現金で支払って決済する方法です。決済時には、買建玉を現物株式で受け取ります。信用取引の売りから始める場合

買い返済
売建玉を買い戻し、買い戻した株式を証券会社に返して決済する方法です。新規売建時の売却代金から買戻金額と諸経費を差し引き、その差額が損益になります(利益の場合は差額を受け取り、損失の場合は差額を支払う。)。現渡し
売建玉と同銘柄・同株数の現物株を証券会社に渡して決済する方法です。決済時には、売建玉の売却代金から諸経費を差し引いた金額を受け取ります。関連リンク
信用取引には、約定代金に対して最大1.155%(税込み)、最低2,750円(税込み)の委託手数料(ただし、売却時に限り、約定代金が2,750円未満の場合には、約定代金に99.0%(税込み)を乗じた金額)をご負担いただきます。みずほ証券ネット倶楽部「オンライン信用取引サービス」の株式委託手数料は無料です。信用取引は、諸費用として買い建玉の場合は買方金利、信用管理費、名義書換料、売り建玉の場合は貸株料、信用管理費、品貸料(逆日歩)等がかかります。店頭を通じた信用取引サービスの場合、委託保証金は売買代金の30%以上、かつ、1,000万円(最低保証金)以上が必要です。また、売買代金の10%相当額は現金を差し入れていただきます。オンライン信用取引サービスの場合、委託保証金は売買代金の35%以上、かつ、30万円(最低保証金)以上が必要です。
信用取引では、委託保証金の約3.3倍まで、オンライン信用取引の場合、委託保証金の約2.85倍までのお取引を行うことができるため、株価の変動により委託保証金の額を上回る損失が生じるおそれがあります。詳しくは、契約締結前交付書面等をよくお読みください。

みずほ証券からの
ひとこと
信用取引は、資金効率を高める一つの投資手法ですが、リスク管理が極めて重要です。特性を十分に理解したうえで、自身の投資目的やリスク許容度に合わせて活用しましょう。