SUMMARY
為替レートの変動要因は様々ですが、この記事では、代表的な為替決定理論である「金利平価説」と「購買力平価説」の二つを紹介します。金利平価説は、金利差が為替レートに影響を与えることを示す理論で、購買力平価説は、物価水準が為替レートに影響を与えることを示す理論です。
為替レートは理論的にはどう決まる?
為替レートは、異なる通貨間の交換比率を示す指標です。為替レートの変動要因には、様々なものがあります。短期的な為替レートの決定理論として「金利平価説」、長期的な為替レートの決定理論として「購買力平価説」がよく知られています。
金利平価説
金利平価説とは?
金利平価説(Interest Rate Parity)は、二つの国の金利差が為替レートに影響を及ぼすという理論です。「為替レートは二国間の名目金利の差によって決まり、どちらの通貨で資産を保有しても収益率が同じになる」というもので、短期的な為替レートの決定理論としてよく知られます。例えば、現在のドル円レートが1ドル=100円とします。日本の金利が1%、米国の金利が4%とした場合、1年後、100円は101円、1ドルは1.04ドルになります。このとき、金利平価説によれば、1年後の為替レートは、将来の通貨価値が等しくなるレート、1ドル≒97円(1.04ドル=100円)になります。
購買力平価説
購買力平価説とは?
購買力平価説(Purchasing Power Parity)は、二つの国の通貨の購買力が等しくなるように為替レートが調整されるという理論です。購買力平価説は、同じ商品やサービスは異なる国でも同じ価格であるという考え方(一物一価の法則、Law of One Price)に基づいており、長期的な為替レートの決定理論としてよく知られます。例えば、日本で1,000円で購入できる商品がアメリカで10ドルで購入できる場合、為替レートの理論的な適正値は1ドル=100円であるという考え方です。絶対的購買力平価説と相対的購買力平価説
購買力平価説には、絶対的購買力平価説と相対的購買力平価説の二つがあります。絶対的購買力平価説
為替レートは二国間の購買力で決まるという理論です。一物一価の法則に基づき、異なる国でも、同じ商品やサービスの価格は為替レートによって等しくなるという考えです。各国のマクドナルドのビッグマック1個の値段から為替レートを算定する「ビッグマック指数」が有名です。
相対的購買力平価説
為替レートは二国間の物価上昇率(インフレ率)で決まるという理論です。インフレ率が高い国の通貨は価値が下がり(通貨安)、インフレ率が低い国の通貨は価値が上がる(通貨高)という考えです。
購買力平価説の具体例
例えば、日本で1,000円で購入できる商品がアメリカで10ドルで購入できるとします。このとき、購買力平価説に基づく理論上の為替レートは1ドル=100円です。しかし、実際の為替レートが1ドル=110円である場合、日本の商品はアメリカの消費者にとって割安となり、アメリカの商品は日本の消費者にとって割高となります。この価格差が続くと、アメリカの消費者は日本の商品を購入するためにドルを売って円を買うことになります。これにより、ドルの供給が増え、円の需要が増えるため、為替レートは1ドル=100円に向かって調整されることになります。
金利平価説と購買力平価説の違い
着目する要因の違い
金利平価説は二国間の金利に着目し、購買力平価説は二国間の物価に着目したもので、それぞれ異なる経済分析や投資判断に利用されます。金利平価説は金利差と為替レートの関係を計算するために金利平価式を使用します。一方、購買力平価説は物価水準と為替レートの関係を計算するために購買力平価式を用います。詳細な計算式に興味がある方は、「みずほ証券 ファイナンス用語集」の該当リンクをご覧ください。
利用目的の違い
金利平価説は主に為替市場で利用され、購買力平価説は為替市場だけでなく、国際貿易など広範な市場でも利用されます。金利平価説は、投資家が国際的な金利差を利用して利益を得ようとする行動を説明する理論で、主に為替市場における短期的な変動を分析するために利用されます。一方、購買力平価説は、国際的な物価比較やインフレ率の分析、長期的な為替レートの動向を分析するために利用されます。そのため、国際貿易や投資など、より広範な市場でも利用されます。
みずほ証券からの
ひとこと
ここでは、為替レートの決定理論のうち、よく知られる二つの理論について紹介しました。実際の為替レートはより多くの要因によって決定されるため、これらの理論だけでは説明できませんが、一つの知識として知っておくと、為替動向への理解が深まり、投資判断の際に役立つかもしれません。