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「先進性」と「波及性」で新しい時代の金融をリードする、みずほ証券のサステナビリティ推進部
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「先進性」と「波及性」で新しい時代の金融をリードする、みずほ証券のサステナビリティ推進部

SUMMARY

“利益ではなく、社会発展のために”という創業当時からの想いを胸に、みずほ証券は業界でもいち早く、持続可能な社会の実現に向けた金融メカニズム「サステナブルファイナンス」に参画してきました。

その先進性と波及性の高い取り組みは世界でも高く評価され、国内外で数々のアワードを受賞しています。環境問題や社会課題との向き合い方、そしてより良い未来の実現に向けて描くビジョンとは──。みずほ証券サステナビリティ推進部の石田さんに、サステナブルファイナンスを推進する理由やその価値、展望を聞きました。

【石田 克義】
2016年、みずほ銀行に入行。現在はみずほ証券サステナビリティ推進部サステナビリティ戦略開発室において、主に SDGs債発行時のフレームワーク策定支援など(ストラクチャリング・エージェント業務)を担当。

※本記事に記載されている所属先は取材当時のものであり、現在の所属先とは異なる場合があります。

みずほ証券が“架け橋”に。本業を通じて、持続可能な社会の実現に貢献したい。

まずは、「サステナブルファイナンス」の概要と具体例から教えてください。

石田:

「サステナブルファイナンス」は、脱炭素や貧困問題などのグローバルな課題解決を目的に、持続可能な社会への転換をめざす“金融手法の枠組み”を指す言葉です。サステナブルファイナンスの一つ「SDGs債」には、環境問題解決に向けた投資の資金使途である「グリーンボンド」や社会福祉、教育などの社会課題解決に向けた資金使途である「ソーシャルボンド」、グリーンボンドでは対応できないものの、企業の移行戦略に沿った脱炭素への移行を進めるための資金使途である「トランジションボンド」などがあります。
 



「ESG投資」と混同されることが多いですが、これは企業の利益などの財務的な要素に加えて、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)などの非財務的な要素を重視する投資手法のことです。持続可能な社会をめざす大きな金融メガニズム(=サステナブルファイナンス)の中に、ESG投資をはじめ、サステナブルな融資や債券、その他さまざまな金融サービスが包含されていると考えると分かりやすいでしょう。
サステナブルファイナンスの一種、SDGs債の種類(一例)
グリーンボンド 企業や国・地方自治体などが環境問題解決に資するプロジェクト資金を調達するための資金使途特定型債券
ブルーボンド グリーンボンドの一種で、海洋汚染防止や持続可能な水産資源に関連するプロジェクト資金を調達するための資金使途特定型債券
ソーシャルボンド 企業や国・地方自治体等が福祉や教育などの社会課題解決に資するプロジェクト資金を調達するための資金使途特定型債券
サステナビリティボンド グリーンボンド、ソーシャルボンド双方のプロジェクト資金を調達するための資金使途特定型債券
トランジションボンド 発行体の温室効果ガス排出削減に向けた長期的な移行(=トランジョン)戦略にのっとったプロジェクト資金を調達するための資金使途特定型債券

 

サステナブルファイナンスの一種、SDGs債は比較的新しいファイナンスですが、発展の経緯や最新の市場動向について教えてください。

石田:

2015年に開催された国連持続可能な開発サミットでのSDGs採択や同年のパリ協定などの国際的な枠組み、国際資本市場協会(ICMA)によるグリーンボンド原則などの整備により、SDGs債は2016年以降に大きく伸長しました。欧州を中心にSDGs債発行が拡大してきた中、日本でも、発行額・件数ともに、ここ数年の成長は顕著ですね。2023年度に複数の大型起債があった影響で、数字だけでみれば2024年度の発行残高は減少していますが、件数自体は横ばいです。国内SDGs債はピーク時と比べるとやや緩やかになりつつも、引き続き高い水準で推移していくと予想しています。

みずほ証券は、業界でいち早くサステナブルファイナンスの取り組みをスタートしました。背景にあった想いや取り組みの軌跡を教えてください。

石田:

2015年のパリ協定を機に「脱炭素」に向けた投資として特に欧州でグリーンファイナンスへの注目が急速に集まりました。このような動きの中で、産業・事業発展のためのファイナンスという従来の目的を超え、サステナブルファイナンスを通じた産業・事業構造転換や変革が求められる時代が必ず来る、そしてその流れに乗り遅れてはいけないという強い危機感が生まれました。同時に、当社の“長きにわたって培ってきたファイナンスの力でこの大きな時代の変化を先導し社会に貢献したい”という想いから、2017年に業界に先駆けてサステナブル・ファイナンス・デスクを設置しました。

その後も2018年に環境系認証団体「Climate Bonds Initiative」とのパートナー契約を締結、2019年にはサステナブル・ファイナンス・デスクを進化・強化したサステナブル・ファイナンス室を設置、2021年に現在のサステナビリティ推進部を新設し大きな発展を遂げてきました。

どの瞬間も、根本にあったのは「利益ではなく、社会発展のために」という創業からの想いです。われわれが、未来を変えたいと願う投資家と、環境や社会課題と向き合っている企業や国・地方公共団体の両者をつなぐ架け橋となって、社会全体のサステナビリティ向上に貢献したい、そしてサステナブルファイナンスがその重要なツールとなると考えてのことでした。

「Sustainable BX Partner」をスローガンに掲げ、市場を牽引。世界で評価を受ける、みずほ証券の“先進性”と“波及性”とは。


※BX…ビジネス・トランスフォーメーション(Business Transformation)の略。企業の価値向上や持続的成長をめざし、経営戦略、組織、ビジネスプロセスなどを抜本的に変革する戦略的取り組みのこと

所属するサステナビリティ推進部の役割を教えてください。

石田:

事業のあらゆる面でサステナビリティへの考慮が求められる今、当社がお客さまに提供するサービスの領域も広がっています。バランスシートの右側(負債・純資産)では、サステナブルファイナンスとして社会課題の解決に資する資金調達をサポートしています。一方で左側(資産)では、サステナビリティを踏まえた新規事業戦略の立案や証券化対応、M&A オリジネーションなど、非金融面でのサポートにも注力しています。その他、ガバナンスや統合報告書等へのアドバイスなど、さまざまな支援を行っています。

私はサステナビリティ戦略開発室に所属し、SDGs債のストラクチャリング・エージェント(以下、SA)業務を担当しています。SA業務は企業のサステナビリティ・ストーリー=「フレームワーク」策定支援やセカンドオピニオンなどの外部評価の取得に関する助言などを通じて、「SDGs債」の発行を支援する業務です。このほか、最先端のサステナビリティ関連動向やサステナブルファイナンスの国際的なルールメイキングに携わる市場・制度調査チーム、サステナビリティの観点を踏まえたIPO・M&A・証券化など証券関連ビジネスに携わる事業金融開発チームなど、多様なチームが一丸となってお客さまのサステナビリティストーリー策定・実行を支援しています。

先ほどお話にあがった「フレームワーク」とは、グリーンボンド原則など国際的な原則にのっとった資金調達の枠組みのことですよね。サステナブルファイナンスと各種原則の適合性を示す重要な役割を持つものですが、策定に際して意識されていることは何ですか?

石田:

意識しているのは、お客さまがめざす中長期的な成長戦略とサステナビリティ戦略を両立し得るフレームワークを策定することです。例えば、あるメーカーに「このような環境配慮製品を市場に供給したい」「このようなサステナブル分野に投資したい」という二つの意向・戦略があるとしましょう。この場合、製品として価値はもちろん、製品と成長戦略の結びつきやサステナビリティ戦略の社会貢献性までをフレームワークに落とし込んだうえで、投資家により明瞭に発信する必要があります。お客さまのサステナビリティ戦略と成長戦略を十分理解したうえで、企業の製品・サービスが環境・社会にもたらすインパクトを正しく評価し、製品・サービスの価値に反映させていくことが「サステナブルファイナンス」というカテゴリ自体の信頼度向上に直結すると確信しています。

みずほ証券のサステナビリティ推進部ならではの強みは?

石田:

サステナブルファイナンスは、比較的新しい分野であり、常に仕組みやルールメイクが更新されていく世界です。“このようにしておけば正解”がないからこそ、日本のカーボンニュートラル戦略の方向性や国内外の関連情報をいち早く把握・収集したうえで、お客さまに影響し得る情報を発信するスピード感が求められます。

その点でいえば、当社は部内の連携だけでなく、SDGs債の動向を調査・分析している海外拠点とも密な連携体制が構築されています。独自リソースや高度な知見はもちろん、「欧州でルールメイクが更新され、それに対して欧州の投資家はどのような反応を見せたか」「では今後同様の事例があった場合に日本の投資家はどのように反応するだろうか」といったような社内や関係先とのディスカッションも先進的なサステナブルファイナンスを実現する原動力となっています。

みずほ証券では、具体的にどのようなSDGs債を手掛けているのでしょうか。

石田:

当社がSAとして関与した2025年度の実績でいえば、大日本印刷さまのサステナビリティ・リンク・ボンドや、キリンホールディングさまのソーシャルボンドなど、多様な債券の発行を支援させていただいています。

2025年8月には、名古屋市さまのフレームワーク作成を支援させていただきました。このフレームワークは、ICMA(国際資本市場協会)が2025年6月に新しく策定した「Sustainable Bonds for Nature: A Practitioner’s Guide」(ネイチャーガイド)にも準拠した国内初のもの
です。名古屋市さまは第4次環境基本計画における重点取り組みの一つとして「自然や水を活かした、人と生きものにやさしいまちづくり」を掲げており、生物多様性条約第 10回締約国会議(COP10)の開催都市にふさわしい、自然が身近に感じられ、潤いのあるまちづくりを進めています。今般、希少な動植物の研究や、動植物の展示を通じた環境教育を行う東山動植物園の再生整備事業をネイチャーボンドガイドにも準拠したプロジェクトとしてフレームワークの資金使途の一つとして設定しました。

<2025年度 主なサステナブルファイナンスの引受/組成実績>
発行体名 債券の種類 発行総額
大日本印刷 サステナビリティ・リンク・ボンド 600億円
キリンホールディングス ソーシャルボンド 650億円
兵庫県 グリーンボンド 150億円
東京臨海高速鉄道 サステナビリティボンド  38億円

また、SDGs債市場のトップランナーとして、これまでに、国内初のブルーボンドや「役員報酬の連動」を債券特性とするサステナビリティ・リンク・ハイブリッド・ボンド、原子力発電所を資金使途とするトランジション・ボンドなど数多くの先進的な取り組みに参画してきました。
 

みずほ証券は、サステナブルファイナンス分野において国内外で複数のアワードを受賞されています。どのような点が評価されたのでしょう。

石田:

当社は、国内SDGs債の引受実績では6年連続NO.1、SA就任件数も5年連続NO.1という、業界トップクラスの実績は大きいと思います。また、先ほどご紹介した国内初のSDGs債などで切り開いた、他社でも応用できるような“先進性と波及性”についても、サステナブルファイナンスの市場拡大に貢献する取り組みとして評価につながったと考えています。

おかげさまで、2025年度は英国の世界的な環境金融専門誌Environmental Finance誌の「Sustainable Debt Awards 2025」において3部門を受賞できました。お客さまの抱える環境・社会課題などへの取り組みを支援させていただき、その積み重ねが世界で認められるというのはわれわれのモチベーションにもつながっています。

個人投資家が参画する価値と、今後の展望。「サステナブルファイナンス」の未来を描く。

昨今の世界情勢を見ると、持続可能な社会というテーマにとっては逆風と思える出来事も多いように思われます。このような状況の中でのサステナブルファイナンスの展望について、石田さんの考えをお聞かせください。

石田:

おっしゃるとおり、政治・経済面の影響からサステナブルファイナンスの市場成長は数年前に比べて落ち着いたように感じます。同分野の先駆者ともいえるEUでは、従来のサステナビリティ情報開示規制を緩和する動きもみられ、企業のサステナビリティ活動を取り巻く外部環境も日々変化しています。一方で環境保全はもちろん、内外の経済・産業・社会の持続的な発展・繁栄に貢献するサステナブルファイナンス自体は決してなくなるものではないでしょう。われわれは引き続き、社会の持続的な発展をめざすための金融サービスを積極的に提供したいと考えています。

この記事をきっかけに、サステナブルファイナンスに興味を持つ読者も多いと思います。個人投資家が同分野に参画する意義や方法を教えてください。

石田:

個人投資家の方々の中でも、近年の猛暑や極端な大雨など地球温暖化による私生活へ
の影響を身近に感じている方が増えているのではないか思います。実際、2030年までに国連の持続可能な開発目標(SDGs)を達成するには、毎年5兆~7兆USドルの資金が必要といわれています。そのためには金融機関や機関投資家の取り組みだけではなく、個人投資家の方々の力も不可欠です。皆さまのそれぞれの選択が、中長期的に持続可能な社会を作っていくための一役を担っているといっても過言ではないでしょう。少しでも興味・関心をお持ちの場合は、企業のESGへの取り組みを評価に組み込んでいる投資信託や個別株投資などをぜひ検討してみてください。また、個人投資家向けの SDGs債が起債されている事例もあります。

企業の決算内容や商品・サービスに比べサステナビリティに対する取り組みは個人投資家にまで届きづらいと思います。ぜひ企業が発行するSDGs債の特徴に目を向けていただくとともに、すでに個別株を保有している企業のサステナビリティへの取り組みも、例えばAIなども活用しながらチェックするのも面白いかもしれません。

今後、サステナビリティ推進部として注力したいことを教えてください。

石田:

サステナブルファイナンスはまだまだ新しく発展途上の分野です。当部の基本理念「ずっと続く社会へ、新しい金融で」を体現すべく、引き続き投資家需要の呼び込みやお客さまのサステナビリティ推進をより注力して進めることが大前提になるでしょう。

加えて、「トランジションファイナンス」への取り組みも強化していきたいですね。これはグリーンファイナンスでは対応できないものの、カーボンニュートラル実現に向けて中長期的な温室効果ガス削減に取り組むお客さまへの支援を目的としたファイナンスで、日本が世界に先駆けて進めてきた分野でもあります。カーボンニュートラル実現には多排出産業へのトランジションファイナンスを通じた資金供給が必須です。そんな中、ルールメイクなど発展途上の分野でもあることから、当社が主体的に携わることで、お客さまがトランジションファイナンスを用いた資金調達を行う際に、投資家からより評価・信頼されるフレームワークを構築できる可能性も広がると考えています。



日本のサステナブルファイナンス市場が急速に成長する中、〈みずほ〉は2030年度までの累計でサステナブルファイナンス100兆円という高い目標を掲げています。今後もサステナブルファイナンスをリードしてきたプロフェショナル集団としての自覚を持ち、お客さまと投資家をつなぐ市場の仲介者として社会の持続的発展に貢献していきたいです。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

石田:

SDGs債の発行に際して、発行元企業は「どのように持続可能な社会の実現に貢献できるのか」、そしてわれわれは「証券会社として、サステナビリティの観点で発行元企業と投資家をどのように結び付け、資金の流れを作り出せるか」を熟考しています。一人ひとりの意識の変化によって環境や社会に対してポジティブな行動ができるように、個人投資家の方々の投資選択がより良い未来への一歩につながります。ご自身の環境意識と親和性の高い企業や、持続可能な社会の実現に向けた貢献が期待できる企業が見つかった場合は、ぜひ積極的に投資いただけるとうれしいです。

石田 克義

石田 克義みずほ証券

サステナビリティ推進部 サステナビリティ戦略開発室

※本記事に記載されている所属先は取材当時のものであり、現在の所属先とは異なる場合があります。


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