遺言書はどのように作るの?
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遺言書はどのように作るの?

SUMMARY

遺言は、家族や友人、知人にのこせる「最後のメッセージ」です。そこに記した「財産の分配方法」は、遺留分を侵害しない限り、法定相続分よりも優先されます。効果が絶大であるだけに、遺言書の内容、作成方法などは法律で厳格に決められています。せっかくのこした「最後のメッセージ」が紛争の種にならないように、遺言書を作成する際には細心の注意が必要です。

「遺言」とは?

遺産の分配方法は、民法で細かく決められています。例えば、夫が亡くなり、のこされた家族が妻と子ども3人だった場合、4人が民法で定められた「相続人」になります(法定相続人)。

夫が「遺言書」を残していなかった場合には、民法では「妻が相続財産の2分の1、残り2分の1を子どもで等分して相続する」と決められています。

しかし、相続人間での遺産争いを避けるため、分配方法をあらかじめはっきりとさせておきたい場合や、最後まで面倒をみてくれる子に(優先的に)相続させたい親など、家族ごとに事情はさまざまです。「被相続人(相続財産を遺す人)」が自分の財産の処分方法について、自分の意思で相続人に伝える方法が「遺言」です。そして、その意思を示した書面が「遺言書」です。

「遺言書」の種類

自筆証書遺言

遺言者自身の手書きによって作成する遺言書です。

証人が必要なく、自分一人でいつでも作成できます。特別な費用はかかりませんが、注意しなければいけない点がいくつかあります。

1つめは、必ず自筆で作成しなければならないということです。パソコンで作成したもの、録音、録画、家族等による代筆は無効となります。

2つめは、定められた様式にしたがって作成する必要があるということです。遺言書は様式が厳格に定められており、様式通りでない場合や不備があった場合は無効になります。

3つめは、遺言書の適切な管理です。自身で保管した場合、遺言書の紛失、第三者による破棄や改ざんなどのおそれがあります。2020年に始まった「遺言書保管制度」を利用すると、遺言書は法務局で管理・保管されるため、遺言書の紛失や第三者による破棄、隠匿、改ざん等を防止することができます。また家庭裁判所での検認手続きも不要になります。

公正証書遺言

遺言者が公証人に遺言内容を口述し、その内容を基に公証人が作成する遺言書です。

法律知識を持つ公証人が作成するため、遺言の様式や内容の不備の心配がありません。作成された遺言書の原本は公証役場で保管されるため、遺言書が破棄されたり、隠匿や改ざんをされるおそれもありません。また、遺言書の開封にあたって、家庭裁判所での検認手続きが不要であるため、相続の開始後、速やかに遺言の内容を確認することができます。

作成費用がかかりますが、他の遺言書と比べて、安全確実な方法と言えるでしょう。

秘密証書遺言

遺言者が遺言を自署し、押印したうえで、封筒に入れて封印し、この封書を公証人と証人2人以上に遺言者の遺言書であることを認めてもらうものです。その証として、公証人と証人は、封紙に署名・押印します。遺言の内容は遺言者しか知らず、その「存在」だけを他の人に認めてもらうということです。

この遺言の場合、「自筆証書遺言」と異なり、自身の手書きである必要がなく、パソコン等で作成されたものでも、第三者が作成したものでも差し支えありません。しかしながら、自筆証書遺言のように「遺言書保管制度」を利用できないため、適切な管理が必要であること、遺言書の開封には家庭裁判所の検認手続きが必要になることを知っておきましょう。

遺言のメリットは?

今まで円満だった親族が相続をめぐって対立し、「骨肉の争い」を繰り広げるという話は、ドラマや小説だけの話ではありません。子や孫のために遺した財産が紛争の種にならないために、被相続人が相続財産の「分配基準」を示すことで、紛争を未然に防ごうという考えが「遺言」です。

相続では、民法で決められた基準(法定相続分)通りに分配することは難しいのが現実です。相続財産には「預貯金(現金)」と「不動産(家、土地)」が混在している場合がほとんどで、特に不動産の割合が高いと、法定相続分通り正確に「何分の1」と分けることは難しくなります。その場合、最終的には相続人が話し合いで決めることになります。しかし、皆がそれぞれ自分の考えを主張し、収拾がつかなくなる場合も少なくありません。

家や土地を共同名義にする方法もありますが、この場合でも「持分権」という問題が生じます。例えば、屋根の補修などの保存行為を行おうとした場合は単独(一人)でできますが、台所をリフォームするといった利用・改良行為の場合には、持分の過半数の賛成が必要です。さらに、解体や売却の場合は全員の同意が必要です。不動産を共同名義にしても完全な解決策になるケースは少なく、法定相続分通りに財産を分けるにはいくつものハードルがあると言えます。

遺言を作るうえでの注意点

遺言は、遺言者のメッセージを相続人や友人などにのこす役目を果たしますが、注意して作らないと、かえってトラブルを起こす要因になります。

注意したいのは、自分の意思を明確に伝えて、誰もが理解できる内容にすることです。「○○は妻に」「○○は長男と長女に2分の1ずつ」など、相続財産のうち何を誰に相続させるのか、分配割合はどうするかなどを明確にする必要があります。

次に注意すべきは、後々トラブルが生じない内容であることです。例えば、長男よりも長女に多くの財産をのこす内容であった場合、その内容を伝えるだけでなく、理由もきちんと明記しておけば、他の相続人の理解を得やすいでしょう。

また、「遺留分」に配慮した内容でなければなりません。これは、一定の範囲の相続人への最低限の取り分を確保する制度です。もし、この遺留分を侵す内容があれば、遺留分を侵された相続人から不足分を請求されることになり、トラブルに発展する可能性があります。

最後に注意すべきは、法律的に有効であることです。特に「自筆証書遺言」の場合、遺言者自ら作成できる手軽さがある反面、様式が違ったり、不備があると遺言そのものが無効になってしまいます。

遺言は、家族や友人、知人にのこせる「最後のメッセージ」です。そこに記した「財産の分配方法」は、遺留分を侵害しない限り、法定相続分よりも優先されます。効果が絶大であるだけに、遺言書の内容、作成方法などは法律で厳格に決められています。せっかくのこした「最後のメッセージ」が紛争の種にならないように、遺言書を作成する際には細心の注意が必要です。

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