米国の雇用統計を見逃すな!
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米国の雇用統計を見逃すな!

SUMMARY

米国の雇用統計(米雇用統計)は、株式や債券市場、為替市場において非常に注目度の高い経済指標です。
アメリカの中央銀行であるFRBの金融政策にも大きな影響を与えます。
今回は、米雇用統計をはじめとした「米国の雇用に関する経済指標」について解説します。

「米雇用統計」と「金融政策」の関係性は

株式市場や為替市場では、米国の雇用統計が非常に重要視されます。

雇用が景気動向をみるうえで重要という理由もありますが、アメリカの中央銀行である連邦準備理事会(FRB)が、政策金利の引き上げや引き下げなどの金融政策を決定する際に、雇用の状況が大きな影響を及ぼすからです。

FRBが行う金融政策には、法律(連邦準備法:Federal Reserve Act)で決められた目的があります。その目的は「雇用の最大化」と「物価の安定」の2つで「デュアル・マンデート(2つの使命)」と呼ばれています。このため、雇用と物価の動向はFRBが利上げや利下げといった金融政策を決定する際に直接影響する重要な要素になります。

「利上げをすると株価が下がる」「米国の金利が上がるとドル高円安が進む」という話を聞いたことがあると思います。経済や投資の世界では一般的な「金利と株価や為替の関係」ですが、金利動向は株式市場や為替市場に影響を与えるため、米雇用統計が注目されるわけです。

中央銀行の金融政策の目的に「雇用」が含まれるのは、非常に珍しいことです。日本をはじめ、多くの国で雇用対策は政府が行う仕事であり、中央銀行の役割ではありません。

例えば、日銀の金融政策の目的は「物価の安定」に置かれています。また、欧州中央銀行(ECB)も「ECBの金融政策の第一の目的は物価の安定を維持することである」としています。中央銀行の金融政策の目的は、物価の安定に設定されていることが多くなっています。

米雇用統計の発表タイミング

米雇用統計が発表されるタイミングは「毎月第一金曜日」といわれることが多いのですが、正確には「12日を含む週の3週間後の金曜日」が発表日です。

米労働省労働統計局が毎月12日を含む1週間に調査を行い、その3週間後の金曜日に発表するのが原則です。多くの場合は第一金曜日に発表されますが、第二金曜日になる場合もあります。

その他の雇用指標

株式や為替のマーケットをみるうえで、米雇用統計は大きな材料です。一方、米国では雇用統計以外にも雇用に関する経済指標が発表されています。

新規失業保険申請件数(イニシャルクレイム)

失業保険の申請件数で、少ない方が景気にとって良い数字となります。毎週木曜日に発表されます。4週間程度の平均線でトレンドをつかむことや、雇用統計の調査が行われる毎月の12日を含む週の数字を確認しておくと良いでしょう。また、米国供給管理協会(ISM)が発表する、ISM製造業景況指数(毎月第1営業日)やISM非製造業景況指数(毎月第3営業日)の内訳に雇用指数が含まれており、雇用の傾向が示されます。

ADP雇用統計

人事関連業務の代行を専門で行うADP社が、数十万社もの顧客企業における数千万人分もの給与データを基に算出しているものです。雇用統計の2日前の水曜日に発表されます。これらの数字に目を通すことで、米国の雇用市場の状況がどのようなものかイメージしておくことも大切です。

発表時にチェックしておきたいポイントとは

実は米国に「雇用統計」という名の経済指標はありません。失業率や労働参加率など、いくつかの雇用関連指標が同時に発表されます。その総称が雇用統計と呼ばれています。では、どの指標に注目したら良いのでしょうか。

伝統的に重視されているのが、「非農業部門雇用者数の増減」と「失業率」です。

非農業部門雇用者数の増減は、その名の通り、非農業部門における雇用者数が前月からどの程度増減したかを示すものです。最も注目度の高い数字です。

失業率は失業者の割合を示す数字で、数字が小さいほど雇用環境が良いことを表します。失業率が3%を下回る状態を、「完全雇用(非自発的失業が存在しない状態)」と言います。

通常は、この非農業部門雇用者数の増減や失業率が、前月の数字や市場予想よりも良い数字だったかどうかが、直後の為替市場を動かす材料となります。

米雇用統計の発表前後は、株式市場や為替市場が大きく動くことがよくあります。発表のスケジュールをしっかり押さえ、マーケットの動向を予測しておくことが大切だと思います。

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