SUMMARY
ヘッジファンドとは、さまざまな取引手法を駆使して、市場の上げ下げにかかわらず利益を追求することを目的としたファンドです。集める資金や投資対象の選択肢が多く、世界最大級のヘッジファンドでは約16兆円もの資金を運用しています。マーケットにおける注目度も高く、マーケットに大きな動きがあったときに「ヘッジファンドの動向」が話題に上ることがあります。
今回は、ヘッジファンドの概要や取引手法、マーケットでの位置付けについて、一般的な投資信託と比較しながら解説していきます。
ヘッジファンドとは
投資信託の価格のことを基準価額と呼び、基準価額は新聞や情報ベンダーの情報端末、運用会社のウェブサイトなどに掲載されます。公募投資信託の場合、投資対象や投資リスク、手数料等の詳細は「目論見書」に明記され、一般投資家でも入手することができます。
一方、ヘッジファンドはごく少数の投資家に対してのみ募集する私募型が多く、限られた大口投資家(プロ投資家など)だけが投資することができます。また、ヘッジファンドの特徴として「さまざまな取引手法を駆使して市場の上げ下げにかかわらず利益を追求する」ことが挙げられます。
ヘッジファンドの目的・運用戦略
ヘッジファンドの目的は、マーケットリスクを認識・評価し、市場の上げ下げのリスクをヘッジ(=避ける)しながら、積極的に収益を確保することです。
投資対象は、単純な株や債券だけでなく複合商品、デリバティブ、為替、あるいはその他商品など多種多様で、それらに対してさまざまな取引手法を駆使して投資をします。また、そのリスクも複雑な計算式などを使って評価し、管理しています。
ヘッジファンドの運用戦略はさまざまです。
株式ロング・ショート
個別銘柄に関する定量/定性的情報や分析に基づいて株式のロング・ポジション(買い持ち)とショート・ポジション(売り持ち)を組み合わせる。
イベント・ドリブン
企業の合併や事業・組織再編、倒産等のイベントによって生じる価格変動をとらえる。
アービトラージ
同一の価値を持つ商品の一時的な価格差(ゆがみ)をとらえて、割高な方を売り、割安な方を買い、その後価格差が縮小した時点で反対売買をする。
一般的な投資信託の運用であれば、目論見書に記載されていない投資対象への投資や取引手法を用いることはできません。しかし、ヘッジファンドの運用では、投資対象だけでなく、取引手法にも自由度があります。ヘッジファンドのファンドマネージャーは、レバレッジ※1や空売り※2、あるいはデリバティブ商品など、利用できる手法や商品すべてを利用して収益を追求します。
- レバレッジ:借り入れを利用することで、自己資金の何倍もの金額で取引を行う投資手法です。
- 空売り:実際に保有していない株式の下落が予想される場合、その株式を証券会社などから借りて 売却する手法です。株価が下がったところで買い戻し、その差額で利益を確保することを目的とします。