SUMMARY
ニュースでよく耳にする「日経平均株価」。日経平均株価が上がったり下がったりすると、多くの人が一喜一憂します。日経平均株価とは何なのでしょうか?なぜそれほど重要視されているのでしょうか?この記事では、日経平均株価の仕組みやTOPIXとの違いを解説します。
日経平均株価とは
日経平均株価とは
日経平均株価は、東京証券取引所プライム市場(以降、東証プライム市場)に上場している銘柄の中から、日本経済新聞社が選定した225銘柄で構成される日本の代表的な株価指数です。正式名称は「日経平均株価」ですが、「日経平均」「日経225」などとも呼ばれます。この指標は、日本の株式市場全体の動きを一目で把握できるため、多くの投資家や経済の専門家に利用されています。日経平均株価の歴史
日経平均株価の歴史は、日本の戦後経済復興とともに始まりました。1950年、東京証券取引所(以降、東証)が再開され、当初は「東証修正平均株価」として算出されていました。その後、1970年に日経グループが算出と発表を引き継ぎました。1975年にダウ・ジョーンズ社と名称や算出方法を独占使用する契約を結び「日経ダウ平均株価」、1985年に現在の「日経平均株価」という名前に変わりました。この長い歴史を通じて、日経平均株価は日本経済の浮き沈みを映し出す鏡として機能してきました。バブル経済期の1989年には当時の史上最高値を記録し、その後の「失われた20年」では低迷を続けるなど、日本経済の姿をよく反映してきたのです。
日経平均株価の重要性
日経平均株価が重要視される理由は数多くあります。まず、株式市場のセンチメント(投資家の心理)を反映する指標として機能します。株価が上がれば投資家の楽観的な見方が、下がれば悲観的な見方が強まっていることを示唆します。
また、投資の判断基準としても広く活用されています。日経平均株価に連動するように設計されている投資信託(インデックスファンド)やETF(上場投資信託)が多数あり、個人投資家から機関投資家まで幅広く利用されています。
他国との比較に用いる指標としても重要です。アメリカのダウ平均株価など、各国の代表的な株価指数と比較することで、日本経済の相対的な強さや弱さを判断できます。
その他、日経平均株価は景気の先行きを示す指標でもあります。企業の業績見通しや、景気の先行きを反映するため、政策を決める人や企業の経営者にとっても重要な参考指標となっています。
このように、日経平均株価は単なる値ではなく、日本経済の健康状態を示す体温計とも言われています。
日経平均株価の仕組み
算出方法
日経平均株価の計算方法は、一見単純に思えますが、実は細かな計算が行われています。まず、225社の株価(株価換算係数で調整後)の合計を計算します。次に、この合計を「除数」と呼ばれる数値で割ります(除数の説明は後述)。最後に、結果を小数点以下2桁まで表示します。
日経平均株価 = 225社の株価(株価換算係数で調整後)の合計 ÷ 除数
※構成銘柄の株価の平均のため、株価の高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすい指数です。
株式分割や銘柄入替が行われた場合、単純に株価を合計するだけでは適切な結果にならないことがあります。そこで、これらの影響をなくすために「除数」を調整しています。
除数とは
日経平均株価の除数とは、指数を算出する際に使用される分母のことです。除数を利用する主な目的は、株式分割や銘柄入替など、市場の実際の変動以外の要因による株価の変化を調整し、日経平均株価の連続性を維持することです。除数を利用することで長期的な比較が可能になります。日経平均株価の算出が開始された当初、除数の値は採用銘柄数と同じ225でした。しかし、時間の経過とともに様々な調整が行われ、現在の除数は当初の値から大きく変化しています。この調整は、指数の連続性を維持するために必要なプロセスです。
除数の調整
除数は主に以下のような場合に調整されます。
- 構成銘柄の入れ替えが行われた場合
- 株式分割や株式併合が実施された場合
- 増資や減資が行われた場合
例えば、ある日経平均採用企業で1株を2株に分ける株式分割が行われた場合、その企業の株価は理論上半分になります。しかし、これは企業価値の変化を伴わない変更です。そこで、除数を調整して株式分割前後で日経平均株価の値が変わらないようにするのです。
除数の調整により、日経平均株価は個別企業の資本政策や構成銘柄の変更に左右されることなく、市場全体の動向を正確に反映し続けることができます。
構成銘柄
日経平均株価を構成する225社は、東証プライム市場の上場企業から選ばれます。選ぶ際には、取引の活発さ(市場流動性※)と業種セクターのバランスが重視されます。つまり、よく取引される銘柄で、かつ、日本経済の各分野を代表する企業がバランスよく選ばれるのです。※市場流動性は、「売買代金」と「売買代金当たりの価格変動率」で計測。計測期間は5年とし、売買代金当たりの価格変動率は(高値÷安値)/ 売買代金 で算出。
<日経平均株価の6セクター・36業種>
セクター | 業種 |
---|---|
技術 | 医薬品、電気機器、自動車、精密機器、通信 |
金融 | 銀行、その他金融、証券、保険 |
消費 | 水産、食品、小売業、 サービス |
素材 | 鉱業、繊維、パルプ・紙、化学、石油、ゴム、窯業、鉄鋼、非鉄・金属、商社 |
資本財・その他 | 建設、機械、造船、輸送用機器、その他製造、不動産 |
運輸・公共 | 鉄道・バス、陸運、海運、空運、倉庫、電力、ガス |
構成銘柄は固定されているわけではなく、定期的に見直しが行われます。原則として年2回、4月と10月の第1営業日に定期的な入れ替えが行われます。なお、上場廃止や企業の合併などの理由で入れ替え(臨時入替)が行われることもあります。
このような見直しにより、日経平均株価は常に日本の株式市場の現状を適切に反映できるよう維持されています。
例として、バブル期(1989年12月末)と、現在(2024年10月末時点)の日経平均株価の時価総額上位10銘柄を比較してみると、1989年12月末では、NTTが首位で、銀行株が上位を占め、ハイテク株は入っていません。一方、2024年10月末時点では、トヨタが首位で、ソニーGやキーエンスといったハイテク株が上位に入っているなど、時代の変化とともに構成銘柄が大きく入れ替わっていることがわかります。
TOPIXとは
TOPIX(東証株価指数)は、日本取引所グループ(JPX)の子会社である株式会社JPX総研が算出・公表を行っている指数です。日本の株式市場ほぼ全体の資産価値の動きを表します。1968年(昭和43年)1月4日における東証一部の時価総額を100ポイントとして、指数化したものです。
算出方法
TOPIXは「浮動株時価総額加重平均方式」で算出します。「浮動株」とは、大株主等の安定株主以外が保有する株式のことです。この浮動株の割合で構成銘柄の時価総額を加重平均したものがTOPIXです。時価総額ベースで算出されるため、時価総額の大きな銘柄の影響を受けやすい指数です。構成銘柄
東証の市場再編を契機に、TOPIX構成銘柄は段階的に見直されています。現時点では、スタンダード市場やグロース市場に所属する銘柄も含まれています。しかし、プライム市場の上場維持要件の一つである「流通株式時価総額が100億円以上であること」を満たさない銘柄は、段階的にウエイトが低減され、2025年1月最終営業日に除外される予定です。TOPIXは、日経平均株価と同様に、日本経済の動向を示す代表的な経済指標として用いられています。また、投資信託(インデックスファンド)やETFなどの金融商品のベンチマークとしても利用されています。
日経平均株価とTOPIXの違い
日経平均株価とTOPIXにはそれぞれの値動きに特徴があります。
日経平均株価は、東証プライム市場上場企業の中から代表的な225銘柄の平均株価を算出するため、主力銘柄の動きを把握する際にわかりやすい指標と言えます。ただし、株価が高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすい特徴があるため、マーケット全体の動きを反映しないケースがあることに留意が必要です。
一方、TOPIXは、時価総額を使用して指数を算出するため、「時価総額の大きい銘柄や業種」の影響を強く受けます。時価総額の大きい業種として、電気機器、輸送用機器、情報・通信、銀行などが挙げられます。
日経平均株価は、東証プライム市場上場企業の中から代表的な225銘柄の平均株価を算出するため、主力銘柄の動きを把握する際にわかりやすい指標と言えます。ただし、株価が高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすい特徴があるため、マーケット全体の動きを反映しないケースがあることに留意が必要です。
一方、TOPIXは、時価総額を使用して指数を算出するため、「時価総額の大きい銘柄や業種」の影響を強く受けます。時価総額の大きい業種として、電気機器、輸送用機器、情報・通信、銀行などが挙げられます。
<日経平均株価とTOPIXの比較表>
日経平均株価 | TOPIX(東証株価指数) | |
---|---|---|
構成銘柄 | 東証プライム市場上場銘柄の中から、流動性とセクターバランスを考慮し選ばれた225銘柄 | 継続構成銘柄:2022年の市場編成前の構成銘柄は継続採用(※流通株式時価総額が100億円未満の銘柄は段階的に除外) 新規構成銘柄:プライム市場に新規上場する銘柄 |
銘柄数 | 225 | 2,128(2024年10月31日時点) |
表示単位 | 円・銭 | ポイント |
算出方法 | 【株価平均型】 株価の平均 |
【浮動株時価総額加重型】 基準時価総額からのポイントの増減 |
特徴 | 株価の高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすい | 時価総額の大きい銘柄の影響を受けやすい |
算出 | 日本経済新聞社 | 株式会社JPX総研 |
日経平均株価とTOPIXの差に着目する「NT倍率」とは
両指数の値動きの差に着目した「NT倍率」は、株式市場全体の方向性を把握する指標です。
NT倍率は、日経平均株価を東証株価指数(TOPIX)で割って算出する指標で、両指数の頭文字をとって名付けられています。2024年10月31日現在のNT倍率は、14.50倍です。日経平均株価がバブル後安値を付けた2009年3月10日以降は、10倍以上で推移しています。
上述の通り、日経平均株価は特定の値がさ株の影響を受けるため値動きが大きくなりやすく、ヘッジファンドなどの短期筋による先物やオプションの売買が集まりやすい傾向にあります。国際情勢など、外部環境の変化に合わせて日本株全体が大きく動く場合は、先行して日経平均株価が動き、TOPIXが追随するパターンが見受けられます。この場合に、日経平均の上昇率がTOPIXの上昇率より高くなれば、NT倍率は上昇します。
NT倍率は、日経平均株価を東証株価指数(TOPIX)で割って算出する指標で、両指数の頭文字をとって名付けられています。2024年10月31日現在のNT倍率は、14.50倍です。日経平均株価がバブル後安値を付けた2009年3月10日以降は、10倍以上で推移しています。
上述の通り、日経平均株価は特定の値がさ株の影響を受けるため値動きが大きくなりやすく、ヘッジファンドなどの短期筋による先物やオプションの売買が集まりやすい傾向にあります。国際情勢など、外部環境の変化に合わせて日本株全体が大きく動く場合は、先行して日経平均株価が動き、TOPIXが追随するパターンが見受けられます。この場合に、日経平均の上昇率がTOPIXの上昇率より高くなれば、NT倍率は上昇します。
みずほ証券からの
ひとこと
投資や経済に関心のある方々は、日経平均株価やTOPIXの動向にも注目しながら、投資判断に活用していきましょう。同時に、日経平均株価やTOPIXはあくまでも一つの指標に過ぎないことを忘れてはなりません。個別企業の財務状況や事業戦略、業界動向、さらには世界経済の状況など、多角的な視点から分析を行うことが、投資の鍵となるでしょう。この記事を出発点として、さらに学びを深めていただければ幸いです。