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社債とは?仕組みから種類、株式との違い、メリット・リスクまで解説
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社債とは?仕組みから種類、株式との違い、メリット・リスクまで解説

SUMMARY

投資の世界には様々な金融商品が存在します。その中でも社債は企業の資金調達と投資家の資産運用の両面で大切な役割を果たしています。本記事では、社債の仕組みから、その種類、社債投資のメリット・リスクなど、社債に関する基本知識について解説します。

社債とは

債券のうち企業(民間の事業会社)が発行するものを社債といいます。社債は、国債や地方債と並んで債券市場の一角を占めており、企業の大規模な設備投資や事業拡大、財務体質の改善などに活用されています。

公共債   国債 国が発行する債券で、「利付国債」や「個人向け国債」、「新窓販国債(新型窓口販売方式国債)」などがあります。
政府関係機関債  

政府関係機関や特殊法人が発行する債券で、「政府保証債」や「財投機関債」などがあります。

地方社債

都道府県や市町村などの地方公共団体が発行する債券です。

民間債 購入方法

民間の事業会社が発行する債券です。


企業は資金調達のために社債を発行し、投資家はその社債を購入することで企業に資金を提供します。この仕組みにより、企業は必要な資金を調達し、投資家は定期的な利子収入を得ながら満期時(償還時)に額面金額を受け取ります。
※1 実際の債券は電子化されています。
※上記は一般的な利付債券の場合です。


例えば、ある企業が10年満期、年利2%の社債を発行したとします。この債券を、投資家が1000万円分購入した場合、投資家は毎年20万円(税引前)の利子と10年後に1000万円の元本を受け取ります。

社債と株式の違い

社債と株式は、どちらも発行体(企業)の資金調達手段ですが、利益の分配方法や議決権の有無などが大きく異なります。

観点 社債 株式
企業からみた位置づけ 負債(返済義務あり) 資本(返済義務なし)
投資家の位置づけ 貸主(債権者) 株主(出資者)
投資家の収益源 利子、売買益、償還益 配当金、売買益
経営への関与 議決権はなく、企業経営への直接的な関与はできない。 株主総会での議決権があり、企業の意思決定に関与できる。
投資リスクと期待リターン 株式と比べてリスクは低く、安定したリターン(利子)が得られる。満期まで保有すれば、発行体に破綻などの信用事由がない限り、額面金額が払い戻されるが、株式のような値上がり益は期待できない。 一般的にリスクが高い分、高いリターンが期待できる。株価上昇により値上がり益を得られる可能性あり。配当金や株主優待によるインカムゲインを得られる可能性もある。

社債を発行する目的

企業が社債を発行する目的は多岐にわたります。主な目的とその詳細について解説します。

1. 事業拡大や設備投資のための資金調達
企業が新規事業に参入したり、生産設備を増強したりする際には、多額の資金が必要です。社債発行は、このような大規模な投資のための資金を一度に調達できる方法の一つです。
例えば、自動車メーカーが電気自動車の生産ラインを新設する際に、数百億円規模の社債を発行して資金を調達するケースなどが挙げられます。

2. 運転資金の確保
事業を円滑に運営するためには、日々の運転資金が欠かせません。社債は、長期的かつ安定的に運転資金を確保する手段として活用されます。

3. 既存の借入金の借り換え
金利の低い時期に社債を発行し、より高金利の既存の借入金(ローン)を返済することで、企業は年間の利払い負担を軽減できます。これは財務体質の改善にもつながります。 

4. M&A(企業の合併・買収)資金の調達 
企業が他社を買収する際、社債を発行して資金を調達することがあります。
例えば、大手IT企業が新興のベンチャー企業を買収する際に、数千億円規模の社債を発行して資金を調達するケースなどが見られます。

5. 資金調達手段の多様化
銀行借入だけでなく、社債発行も活用することで、企業は資金調達手段を多様化できます。これにより、特定の資金源への依存度を下げ、財務の安定性を高めることができます。 
例えば、銀行借入に依存していた中堅企業が、社債を発行することで資金調達手段を多様化するケースなどがあります。

このように、企業は自社の経営戦略や財務状況に応じて社債を発行します。投資家にとっても、企業がどのような目的で社債を発行しているかを理解することは、投資判断を行ううえで大切な情報となります。社債の目論見書(もくろみしょ)には、集めた資金の使用用途が記載されているため、社債の購入を検討する際は、よく確認しましょう。

社債発行による資金調達の特徴


① 資金計画を立てやすい
返済期間を企業が設定でき、将来にわたって必要なコストも発行時に確定するため、資金繰りに適した社債発行できます。

② 満期日までは元本の返済が不要
毎月一定額の返済が求められる銀行借入と異なり、社債は満期日まで返還が必要ないため、調達資金をまとめて投資に充てられます。

③ 経営権に影響しない
債権者は議決権を保有しないため、企業の意思決定には影響を及ぼしません。

④ 財務構造を調整できる
借入への依存度を下げて財務のバランスを取ったり、資本効率を改善したりすることができます。

⑤ 返済義務がある
株式と異なり、社債には返済義務があるため、償還日には必ず返済をする必要があります。銀行借入の場合は返済猶予などの相談余地がありますが、社債にはありません。

⑥ 利払いコストがかかる
利子分の支払いが定期的に求められます。

⑦ 発行手数料がかかる
社債発行時は、基本的に証券会社等に手続きの委託をするため、引受手数料や取扱手数料などがかかります。また、目論見書の作成・印刷費用や格付け取得費用などもかかります。

社債に投資するメリットとリスク

メリット

安定した利回り

社債は、定期的に利子が支払われるため、安定した収入が期待できます。

株式よりも低リスク

一般的に、社債は株式と比較して価格変動の幅が小さく、リスクが低いとされています。また、満期まで社債を保有すれば、発行体に破綻などの信用事由がない限り、額面金額が払い戻されます。

多様な選択肢

社債には様々な種類の商品があり、投資家のニーズに合わせて選択できます。国債並みの低リスク商品から、ハイイールド債(利回りが高く、信用格付が低い債券)などの比較的高リスクな商品まで、いろいろな社債があり、期間も短期から超長期まで様々です。そのほか、転換社債や新株予約権付社債など、特別な権利の付いた社債もあります。
 

リスク

社債投資には様々なメリットがありますが、同時にリスクも存在します。

信用リスク

信用リスクとは、発行企業が経営破綻や財務状況の悪化により、利子が支払われなかったり、元本を受け取れなくなったりするリスクをいいます。発行企業が債務不履行に陥るデフォルトリスクや、発行企業の信用力が低下し、社債の格付けが引き下げられる格下げリスクなどがこれにあたります。
社債に投資する際は、発行企業の財務体質が健全か、しっかりと確認することが重要です。

価格変動リスク

価格変動リスクとは、市場金利の変動により社債の価格が変動するリスクです。市場金利が上昇している環境下では、既存の固定金利の社債の価値が下落するため、中途売却を行う場合は損失が発生する可能性があります。

流動性リスク

流動性リスクとは、社債を希望する時期や価格で売却できないリスクです。社債を中途売却する場合は、銘柄によっては、希望した時期に売却できない、希望する価格で売却できない、売却金額が購入金額よりも低い金額になる、などの場合もあります。

社債の種類

社債には様々な種類があり、それぞれに特徴があります。ここでは、主な分類と代表的な社債の種類と投資のポイントについて紹介します。

発行体による分類

社債の種類 概要 特徴 投資のポイント
事業債 一般の事業会社が発行する社債。製造業、サービス業、小売業など、幅広い業種の企業が発行 ●一般的に、国債よりも高い利回りが設定される(ただし、信用リスクは国債よりも高くなる)
●大手企業から中堅企業まで、様々な規模の企業が発行
●発行企業の事業リスクが直接反映されるため、企業の財務状況や信用力、業界動向の分析が大切
●同じ業界内での比較や、過去の財務データの推移を確認することで、より適切な投資判断が可能
電力債 電力会社が発行する社債 ●安定した事業基盤を持つことから、比較的安全性が高いと考えられている
●エネルギー政策や環境規制の影響を受けやすい面がある
●近年は再生可能エネルギー関連の投資資金調達なども目的として発行されている
●電力需要の動向やエネルギー政策の変更に注意を払う必要がある
●ESG投資の観点から、各電力会社の環境への取り組みも大切な判断材料となる

権利や特徴による分類

社債の種類 概要 特徴 投資のポイント
普通社債
(Straight Bond, SB)
最も一般的な社債で、単純に利子の支払いと元本の償還が行われるもの。多くの上場企業が発行しており、個人投資家でも比較的アクセスしやすい社債 ●満期までの期間や利率が明確に定められている
●他の種類の社債と比べて、仕組みがシンプルで理解しやすい
●発行企業の信用力によって利率が決定される
●発行企業の財務状況や事業の安定性を十分に分析することが大切
その他債券(例) 転換社債型新株予約権付社債(転換社債、Convertible Bond, CB)

一定の条件下で、債券を株式に転換できる権利が付いた社債。成長期にある企業や、大型の設備投資を控えている企業などが発行するケースが多く見られる
●株価が上昇した場合、株式に転換することで値上がり益を得られる可能性がある
●株式への転換価格は発行時に決定され、通常は発行時の株価よりも高く設定される
●株価が下落しても、満期まで保有すれば、発行体に破綻などの信用事由がない限り額面金額が払い戻されるため、下値リスクが限定的
●転換価格と現在の株価との関係を理解し、転換の可能性を評価することが大切
新株予約権付社債(ワラント債)

新株予約権付社債は、社債に、新株を引き受ける権利(新株予約権)が付いた債券。ハイテク企業や新興企業が、将来の成長を見込んで発行するケースが多い
●転換社債と異なり、社債部分と新株予約権は分離できる
●新株予約権を行使しなくても、社債部分の額面は償還される
●株価上昇時には新株予約権の価値が高まり、追加的な利益が得られる可能性がある
●社債部分と新株予約権部分を別々に評価し、総合的な投資判断を行うことが大切

返済順位による分類

社債の種類 概要 特徴 投資のポイント
優先債(シニア債) 返済順位が最も高い社債。大手企業が事業資金調達のために発行する無担保社債の多くが、シニア債に該当する ●他の債務よりも優先して返済される
●比較的低い利回りが設定されている
●信用リスクが最も低い社債タイプとされている
●安全性を重視する投資家に適している
●利回りは低めだが、安定した投資対象となる
中間債/劣後優先債(メザニン債) シニア債とジュニア債の中間に位置する社債。成長期の中堅企業が、事業拡大資金を調達する際に発行するケースがある ●返済順位はシニア債より低く、ジュニア債より高い
●シニア債よりも利回りが高い
●返済順位と利回りから、リスクとリターンのバランスを取りたい投資家に適している
●転換権や参加権などの特殊な条件が付与されていることがあるため、条件を十分に理解することが大切
劣後債(ジュニア債) 他の債務よりも返済順位が低い社債。一定の条件下で自己資本に算入できる ●シニア債、メザニン債と比べて弁済順位は低いが、相対的に利回りが高い
●金融機関が自己資本比率を高めるために発行するケースが多い
●高い利回りと引き換えに、より高いリスクを負うことを理解する必要がある
●発行体の財務健全性を特に慎重に評価することが大切

募集範囲による分類

社債の種類 概要 特徴 投資のポイント
公募債 不特定多数の投資家向けに発行される社債 ●情報開示が充実しており、個人投資家でも購入しやすい ●流動性が高いため、売買が比較的容易
●情報が公開されているため、投資判断がしやすい
●小口での購入が可能なため、個人投資家にも適している
私募債 特定の投資家向けに発行される社債 ●一般的に発行規模が小さく、流動性が低い
●機関投資家や特定の大口投資家向けが多い
●最低購入金額が数千万円からと、公募債と比べて大きい
●比較的高い利回りが設定されていることがあるが、流動性リスクを考慮する必要がある
●発行体と直接交渉できる可能性があり、カスタマイズされた条件での投資ができることがある

なお、社債には、円建てで発行されるものだけでなく、ドルやユーロなどの外貨建てで発行されるものもあります。外貨建て債券は信用リスク・価格変動リスク・流動性リスクに加えて為替変動リスクがある一方、円建て債券と比較して高い利回りが設定されていることが多いです。

社債の購入方法

社債は、証券会社で購入できます。
一般的に、公募債の場合は100万円程度から購入できます。個別の社債の最低購入金額は、募集時のリーフレット等に記載されている「申込単位」で確認できます。

社債の選び方

社債を選ぶ際は、発行体の財務状況や社債発行の目的(資金使途)に加え、利率や利回り、満期までの期間、格付けなどを参考に、自身の目的に合う商品があれば検討してみるとよいでしょう。

みずほ証券からの
ひとこと

社債は、国債などと比べ利回りが高く、株式と比べてリスクが低い傾向があり、これから投資を始める方にも十分に選択肢となり得る商品です。特に、リスクはあまり取りたくないけれど預金よりは資産を増やしたい方や、中期的に投資に充てられる余剰資金がある方などには、検討の価値がある商品といえます。

投資にあたっては、企業の財務状況や格付けが重要な判断材料の一つとなりますが、これらの分析が難しいという方は、証券会社等の担当者に相談してみてもよいでしょう。

また、社債は金融機関ごとに取扱銘柄が異なるため、社債の引受額が多い金融機関と取引すれば、自身の投資の選択肢を増やすことにつながるでしょう。

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