SUMMARY
東京証券取引所(以下、東証)は、2024年11月5日(火)から、現物株式売買システム「arrowhead(アローヘッド)」の更改に伴い、取引時間を30分延伸しました。本記事では、変更点や関連用語を詳しく解説します。
▼本記事のポイント
・東証の取引時間が30分延伸されました。
・新たに「クロージング・オークション」という仕組みが導入されました。
東証の取引時間延伸の概要と背景
東証の取引時間延伸の概要
2024年11月5日(火)から、東証の後場の取引終了時刻が30分後ろ倒しとなり、15時30分まで取引可能になりました。具体的な取引時間は以下の通りです。● 2024年11月1日(金)までの取引時間:
前場:9時00分~11時30分、後場:12時30分~15時00分
● 2024年11月5日(火)からの取引時間:
前場:9時00分~11時30分、後場:12時30分~15時30分
この変更により、1日の取引時間は5時間から5時間30分に延伸されました。
東証の取引時間延伸の背景
東証は、「市場を巡る環境変化や多様化する投資家のニーズに対応するとともに、市場利用者の利便性や国際競争力、レジリエンス(回復力、耐久力)をさらに高めていく観点」で実施すると説明しています。東証の取引時間延伸は、2つの重要な観点から検討・実施されることになりました。まず、2020年10月に発生したシステム障害による終日売買停止を契機に、市場のレジリエンス向上が課題として浮上しました。取引時間を延伸することで、障害発生当日でも取引機会を確保できる可能性が高まる点が、検討開始の直接的なきっかけとなりました。
また、日本の現物市場の立会時間(金融商品取引所で取引が行われる時間)が欧米やアジア諸国と比較して短い現状を踏まえ、より長期的・戦略的な観点からも検討が進められました。具体的には、取引時間延伸により投資家の取引機会が拡大し、市場の利便性が向上することで、日本の市場機能や国際競争力の強化につながる期待があります。
証券取引所 | 取引時間 | |
---|---|---|
東京証券取引所 | 2024年11月5日(火)から 9時00分~11時30分、 12時30分~15時30分 |
5.5時間 |
ニューヨーク証券取引所 | 9時30分~16時00分 | 6.5時間 |
ロンドン証券取引所 | 8時00分~16時30分 | 8.5時間 |
香港証券取引所 | 9時30分~16時00分 | 5.5時間 |
このように、取引時間延伸は、システム障害の単なるレジリエンス対策にとどまらず、日本の証券市場の魅力を高め、グローバルな競争力を向上させるための重要な施策の一つとして位置づけられています。
現物売買システム(arrowhead)の更改
東証は、2024年11月5日(火)に現物売買システム「arrowhead(アローヘッド)」の大規模な更改を実施しました。arrowheadは2010年に導入され、その後も継続的に改良が加えられてきましたが、今回の更改は特に大規模なものです。
このシステム更改とあわせて、立会時間の延伸など売買制度の改善や、クロージング・オークションの導入など新サービスの提供が開始されました。
クロージング・オークションとは
2024年11月5日(火)から、東京証券取引所・名古屋証券取引所・福岡証券取引所・札幌証券取引所では、終値形成における透明性の更なる向上を目的として、クロージング・オークションが導入されました。
クロージング・オークションとは
クロージング・オークションは、公平で透明性の高い終値を決定するため、取引終了前の15時25分~15時30分の間に行われる、新たな価格決定方法です。この取引終了前の15時25分~15時30分のことを「プレ・クロージング」と呼び、この5分間は注文を受け付けるのみで約定されず、15時30分に、「クロージング・オークション」で決められた価格で取引が成立します。ザラバ方式と板寄せ方式
株価の決まり方(売買が成立する方式)は、「ザラバ方式」と「板寄せ方式」の二つがあります。ザラバ方式は、リアルタイムで売り注文と買い注文をマッチングさせて価格を決める仕組みのことです。板寄せ方式は、約定値段決定前の呼値(注文)をすべて注文控え(板)に記載したうえで価格的に優先順位の高いものから対当させながら(価格優先原則)、数量的に合致する値段を求め、その値段を単一の約定値段として売買契約を締結させる仕組みのことで、取引開始時や再開時、終了時に適用されます。
2024年11月5日(火)からは、15時25分にザラバが一旦終了し、その後の5分間でプレ・クロージングと呼ばれる時間帯が設けられました。クロージング・オークションの導入後は、プレ・クロージング中に、投資家から大量の買い注文・売り注文を集め、これを基に板寄せ方式で終値を決めるため、従来よりも公正な終値を決めることができます
金融商品取引法に係る重要事項