SUMMARY
日々の仕事や家事に追われる中、資産運用の必要性を感じながらもなかなか踏み出せないという方がいらっしゃるのではないでしょうか。また、株式投資については、「難しそう」「時間がとれない」という不安から、始めるタイミングを逃してしまうことがあります。本記事では、投資を始める第一歩となる「株式(日本株)の注文と約定」について、実践的な例を交えながら分かりやすく解説します。
株式(日本株)の注文可能時間
株式(日本株)の取引時間 ※証券取引所の立会内取引
取引区分 | 時間帯 | 特徴 |
---|---|---|
前場 |
9:00~11:30 |
朝一番の取引が活発 |
昼休み |
11:30~12:30 |
注文は可能だが約定なし |
後場 | 12:30~15:30 |
大引けに向け取引が活発に |
注文を出せる時間
株式の注文は、市場の取引時間外でも受け付けています。多くの証券会社では、平日の早朝から深夜まで注文を出すことができます。土日祝日も注文は可能ですが、これらは翌営業日の取引となります。株取引の基本
証券会社で口座を開設する
株取引を始めるには、まず証券会社で口座を開設する必要があります。証券会社に口座がないと、株式の取引はできません。株式の発注時に指定すること
株式(現物)を注文する際には、銘柄、株数、売買の別、注文方法、値段(指値注文の場合)、取引口座を指定する必要があります。注文の際に必要な項目 | 内容 |
---|---|
銘柄 | 取引したい銘柄の指定 |
株数 | 売買する株数 |
売買の別 |
|
注文方法 |
|
価格 (指値注文の場合) |
買いたい・売りたい価格 |
取引口座 | 取引する口座の種類
|
銘柄の指定
株式の銘柄(企業)には、銘柄ごとに「銘柄コード(原則、4桁の英数字)」が付与されています。ネットで取引する場合、取引画面等に付いている検索機能を使って銘柄を指定することができます。株数の指定
取引所を通じた株取引では、売買単位(1単元)が定められています。原則として、上場銘柄は100株が1単元で、その整数倍で取引ができます。「株式を●万円分買いたい」など、金額を指定した取引はできませんので、指値の金額や直近の終値などを参考に、株数を事前に計算しておきます。注文方法・価格
株取引の際、価格を指定して注文することを「指値(さしね)注文」、価格を指定せずに注文することを「成行(なりゆき)注文」といいます。指値注文をする場合は、具体的にいくらで発注するか、価格を指定します。指値注文では、買い指値の場合「〇〇円以下なら買うが、この価格より高ければ買わない」、売り指値の場合「〇〇円以上なら売るが、この価格より安ければ売らない」といった、基準となる価格を指定します。例えば、現在2,000円で取引されている株式を1,950円で買いたい場合、買い指値を1,950円と指定します。この場合、1,951円以上では取引は成立せず、市場の売り気配が1,950円以下になった時点で取引が成立します。
成行注文は、「いくらでもよいから買いたい・売りたい」場合の注文方法で、価格を指定せず、その時点の市場価格で即座に取引を成立させる方法です。取引の成立を優先させたい場合に使用します。ただし、市場の状況によっては予想以上に高い価格で買うことになったり、安い価格で売ることになったりします。また、売買が成立しないこともあります。
逆指値注文は、通常の指値注文とは異なり、指定した価格以上になったら買い注文を発注する、指定した価格以下になったら売り注文を発注するという特殊な注文です。上昇トレンドに追随して株式を買い付けたいとき、損失を一定額に抑えるための損切(ロスカット)をしたいときなどに利用されます。
また、上記のほかに、寄付や引け時点のみ有効など、注文の執行条件を選択して注文することもできます。
取引口座
取引口座には、大きく分けて、非課税口座と課税口座があります。【非課税口座】 NISA口座
【課税口座】 特定口座(源泉徴収あり・なし)・一般口座
NISA口座を選択した場合、口座内で行った取引から得た利益は非課税です。
特定口座もしくは一般口座を選択した場合、口座内で行った取引から得た利益には税金がかかります。特定口座では、口座内の税金計算を証券会社が行いますが、源泉徴収あり、源泉徴収なしのいずれかを選択でき、源泉徴収ありの場合は納税まで証券会社が代行してくれます。源泉徴収なしの場合は、証券会社が行った税金計算をもとに、自身で確定申告する必要があります。一般口座の場合は、税金計算から納税(確定申告)まですべて自身で行います。
注文の訂正と取消
一度出した注文でも、約定前(取引成立前)であれば、注文訂正(注文内容の変更)や注文取消ができます。注文訂正時に、注文株数を増やしたり、注文価格の変更ができるか等は、取引している証券会社などに確認するようにしましょう。株取引の成立(約定)の優先順位
株式の約定方法の説明をする前に、注文の優先順位に関するルールに触れておきましょう。それが、「価格優先の原則」と「時間優先の原則」です。これらの原則によって、どの注文が優先して成立するのかが決まります。
例えば、「1,000円で買いたい」と「1,001円で買いたい」という注文がある場合、高い方の1,001円の注文が先に成立します。逆に、売り注文の場合、「1,000円で売りたい」と「999円で売りたい」という注文があると、安い方の999円の注文が先に成立します。
例えば、10時に「1,000円で買いたい」と注文を出した人と、10時5分に同じ価格で注文を出した人がいた場合、10時の注文が先に成立します。
価格優先の原則
買い注文はより高い価格が、売り注文はより安い価格が優先される原則です。例えば、「1,000円で買いたい」と「1,001円で買いたい」という注文がある場合、高い方の1,001円の注文が先に成立します。逆に、売り注文の場合、「1,000円で売りたい」と「999円で売りたい」という注文があると、安い方の999円の注文が先に成立します。
時間優先の原則
同じ価格の注文が複数あった場合は、先に出した注文が優先される原則です。例えば、10時に「1,000円で買いたい」と注文を出した人と、10時5分に同じ価格で注文を出した人がいた場合、10時の注文が先に成立します。
株取引の成立(約定)の仕方
株式の取引が成立する仕組みには、「板寄せ方式」「ザラバ方式」の2つの方法があり、時間帯によってどの方法で取引が成立するかが変わります。また、15:25~15:30の間は注文が約定せず(クロージング・オークション)、この間に受け付けられた注文については、15:30に板寄せ方式で決められた終値で取引が成立します。

市場の開始時や終了時は注文が集中しやすいため、この方式を使うことで価格の急激な変動を抑えています。
例えば、「1,001円で買いたい」という注文と「1,001円で売りたい」という注文が出されると、その瞬間に取引が成立します。買い手と売り手の注文がリアルタイムで処理されるため、価格は常に変動しています。
ザラ場では、価格が常に動いているため、相場の流れを見ながら売買のタイミングを考えることが重要です。
ザラ場の最終局面では、取引終了時間が近づくにつれて売買注文が集中することが多く、価格の変動が大きくなりやすい傾向があります。クロージング・オークションを行うことで、終値を適正に決めることができます。

板寄せ方式
板寄せ方式は、市場が開くときや閉まるときに使われる方法です。注文を一定時間集めたあと、その時点で出されている注文をすべて「板(ある銘柄の売り注文と買い注文の状況を価格別に一覧にした表のこと)」に記載し、価格優先の原則に従い、売り注文と買い注文を合致させていきます。板寄せ前に集まった注文はすべて同時に出された注文とみなされるため、時間優先の原則は適用されません。市場の開始時や終了時は注文が集中しやすいため、この方式を使うことで価格の急激な変動を抑えています。
板寄せ方式が適用されるタイミング
- 市場が開くとき(寄付)
- 市場が閉まるとき(引け)
- 売買が一時停止したあとに取引が再開されるとき
- 注文が殺到し、株価が急変動する可能性があるとき(特別気配・連続約定気配の表示時)
ザラバ方式
ザラバ方式は、板寄せ方式とクロージング・オークションが適用される時間帯以外の時間(ザラ場)に使われる方法です。価格優先の原則、時間優先の原則に従い、合致したものから順に約定させていきます。例えば、「1,001円で買いたい」という注文と「1,001円で売りたい」という注文が出されると、その瞬間に取引が成立します。買い手と売り手の注文がリアルタイムで処理されるため、価格は常に変動しています。
ザラ場では、価格が常に動いているため、相場の流れを見ながら売買のタイミングを考えることが重要です。
ザラバ方式が適用されるタイミング
- 板寄せ方式・クロージング・オークションが適用される時間帯以外
クロージング・オークション(大引けの板寄せ)
市場が閉まる直前の15:25~15:30には、「クロージング・オークション」が適用されます。これは、取引終了時の価格を公平に決定するための仕組みで、板寄せ方式を利用して取引が成立します。ザラ場の最終局面では、取引終了時間が近づくにつれて売買注文が集中することが多く、価格の変動が大きくなりやすい傾向があります。クロージング・オークションを行うことで、終値を適正に決めることができます。
クロージング・オークションが適用されるタイミング
- 大引け(15:25~15:30)
株式の受け渡し
株式など金融商品の決済日を「受渡日」といいます。
株取引では、取引成立(約定日)から2営業日後が受渡日です。株主優待を目的に株式を購入する場合は、「権利付最終日」までに株式を買い付けておく必要があるため、株式の権利を逃さないように事前に「権利付最終日」を確認しておきましょう。
株取引では、取引成立(約定日)から2営業日後が受渡日です。株主優待を目的に株式を購入する場合は、「権利付最終日」までに株式を買い付けておく必要があるため、株式の権利を逃さないように事前に「権利付最終日」を確認しておきましょう。

株式投資における留意点
多くの場合、購入資金を事前に入金しておく必要がある(完全前受制)
ネット注文の多くでは、「完全前受制」という仕組みが導入されていることが一般的です。完全前受制の場合、実際に取引を行う前に、必要な資金や株式が口座に用意されていなければ注文ができません。例えば、1株2,000円の株式を100株購入する場合、20万円+委託手数料の資金が必要です。この金額が証券口座にない状態では、注文自体ができません。売買手数料がかかる
証券会社によって手数料体系は異なりますが、一般的には株式の取引では委託手数料がかかります。「価格×購入株数」で計算される売買代金のほかに、手数料がかかる点に留意しましょう。
株式の取引で利益が出た場合、特定口座・一般口座なら税金がかかる
株式投資での売却益(譲渡益)や配当金には、原則として20.315%(復興特別所得税含む)の税金がかかります。ただし、NISA口座を利用すれば、売却益(譲渡益)や配当金が非課税となります。

みずほ証券からの
ひとこと
株式投資は一見難しく思えるかもしれませんが、本記事で解説した基本的な注文方法や取引の仕組みを理解したうえで、まずは少額から取引を始めて経験を積んでみてもよいでしょう。日々の取引を通じて、自分に合った投資スタイルを見つけていきましょう。