米国株式の魅力
米国株式への投資が魅力的な理由はさまざまですが、ここでは5つの魅力を紹介します。
① 米国経済の成長の恩恵を受けられる
日本市場とのパフォーマンスの差
過去20年間を振り返ると、米国の代表的な株価指数であるS&P500は、日経平均株価に対して
約 2 倍のパフォーマンスを示しています。
なぜ米国市場は高い成長力を持つのか
米国の
実質 GDP(国内総生産)の年間の変化率は、コロナ禍の2020年を除き、一貫してプラスを維持しています。IMF(国際通貨基金)の世界経済見通し(WEO)によると、実質GDPの年間の変化率は、2021年が +5.9%、2022年が +2.1%、2023年が +2.5%、そして2024年も +2.8% という高い伸びを達成しています。米国が安定的に成長する主な理由は以下のとおりです。
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人口が増え続けていること
―米国国勢調査局によると、総人口は2020年から2021年に+0.2%、2021年から2022 年に+0.4%、2022年から2023 年に+0.5%、そして2023年から2024 年には+0.97%と5年連続で純増しています。2024年の+0.97%(約340万人増)は2001 年以来最大の伸び率です。緩やかに増加する人口トレンドが労働力と内需を拡大し、米国の潜在成長率を支えています。
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GDPの約7割を占める個人消費支出が伸び続けていること
―過去10年で、米国個人消費支出(PCE)は55%増加しています。
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世界中から優秀な人が集まり、新しい技術が次々と生まれること
―米国は、世界の移民総数のうち、単一国として最多の17% を受け入れており、高度人材ビザ(H-1B等)も毎年発給上限まで消化しています。 (執筆時点)
第2次トランプ政権が発足した後の米国株式市場では、株価が方向感を欠く展開が続いていますが、依然として、高い経済成長力を持つアメリカの株式市場は世界のマーケットの中心であり、日本の株式市場よりもはるかに大きな規模となっています。
米国株式市場と日本株式市場の規模の違い
上記のとおり、米国市場は圧倒的な規模を誇り、世界経済の成長を最も直接的に享受できる市場といえます。また、世界中から投資が集まる米国市場は、売買が活発で、適正な価格で取引されやすいという特徴もあります。
②世界的な大企業に投資できる
身近なサービスを提供する企業の株主になれる
私たちが毎日のように使っているスマートフォン、検索エンジン、SNSなどを開発し、提供している企業の多くが米国市場に上場しています。朝起きてiPhoneでニュースをチェックし、気になったことがあればGoogleで検索し、必要な日用品はAmazonで買い、余暇時間にはNetflixで映画やドラマを視聴する。こんな生活を送っている方も多くいるかもしれません。ここに挙げた製品・サービスのすべてが米国企業が提供しているものです。これらの企業に直接投資ができ、株主になれることは、米国株式投資の大きな魅力です。
世界時価総額ランキングが物語る米国企業の成長力
「Magnificent 7」と呼ばれる企業群(Alphabet(Google)、Apple、Meta Platforms、Amazon、Microsoft、NVIDIA、Tesla)のうち6社(Apple、Microsoft、NVIDIA、Alphabet、Amazon、Meta Platforms)がトップ10入りしています。また、世界時価総額ランキングのトップ10のうち8社が米国企業です。これら8社の合計時価総額だけで約19.1兆ドルとなり、日本の株式市場全体の2.8倍以上の規模に相当します。
③高配当・株主還元文化
日本とは異なる株主重視の経営文化
米国企業は株主還元を重視する企業が多く、年4回の配当が一般的です(日本は通常年2回)。また、長期にわたって連続増配を続ける企業も存在し、例えば、コカ・コーラ(Coca-Cola)は60年以上、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)は50年以上も毎年配当を増やし続けています(執筆時点)。こうした連続増配企業は「配当貴族」と呼ばれ、安定的な株主還元の象徴として投資家に評価されています。
魅力的な高配当利回り銘柄の数々
配当利回りが高い銘柄の例(2025年6月時点、参考値)
日本株の平均配当利回り(TOPIXベース)も2%台前半に過ぎませんが、米国の高配当利回り株には 5%超の利回りを提示する銘柄も多く、日本株と比べても大きなインカム(配当)を期待できます。例えば利回り5%の銘柄に100万円投資すれば、年間約5万円(四半期配当なら約1万2,500円ずつ)を受け取れる計算です。もっとも、配当は米ドルで支払われるため為替変動リスクがあり、円高局面では実質利回りが目減りする点には注意が必要です。加えて、米国企業は自社株買いにも積極的です。例えば Appleは過去10年間で自社株買いに累計6,000億ドル超を投じており、株主還元策を総合的に評価できることが米国高配当利回り株投資の大きな魅力といえます。
④投資対象国・通貨の分散ができる
日本株・日本円に資産を偏らせると、国内景気の停滞や為替変動の影響を資産全体で受けるリスクが高まります。米国株に投資することで、日本とは異なる経済成長を取り込むことができ、決済通貨の米ドルも同時に保有できるため、「国」と「通貨」の両面でリスク分散が可能です。実際、過去20年間で円は対ドルで約30%下落しており、ドル建て資産は円換算で価値が目減りしにくかったことからも、複数通貨で資産を持つ効果が裏付けられます。
⑤買付時より円安になれば、為替差益も発生
米国株式投資では、株価上昇や配当だけでなく、為替差益による利益も期待できます(後述の「円貨決済」で購入した場合)。仮に株価が購入時と変わらず、配当がなくても、為替が購入時より円安になっていれば、為替差益が生じます。
例:株価が200ドルのA銘柄を10株、1ドル=140円で購入。
1年後に1ドル=150円まで円安になったときに売却した場合。(株価の上昇はないものとする)
購入額:株価200ドル×10株×140円=280,000円
売却額:株価200ドル×10株×150円=300,000円
⇒為替だけで+20,000円の利益
※別途手数料、税金がかかります。
日本株式と比べた米国株式の特徴
米国株式を実際に取引するには、日本株式の取引といくつか異なる点があるので、事前に知っておきましょう。
取引時間とタイムゾーン
現地時間(米国東部標準時)9:30~16:00、日本時間では
23:30~翌6:00(サマータイム期間は
22:30~翌5:00)に取引が行われています。
また、証券会社によっては、日本の日中に外国株式を売買できる相対取引(仕切り取引)もあります。取扱銘柄は限られますが、日本時間に売買したい・損益を確定させたい、という方は、こちらを検討してもよいでしょう。相対取引は、後段で詳しく紹介します。
決済通貨(円貨決済と外貨決済)
米国株式を売買する際の決済方法には、主に「円貨決済」と「外貨決済」の二つがあります。口座にドルがなくても、円貨決済を利用すれば、米国株式に投資できます。逆に口座にドルがあれば、外貨決済を利用して投資することもできます。
上場形式
米国市場では、通常の株式に加えて多彩な証券形態が取引されており、投資家は幅広い選択肢を持てます。この多様性こそ、日本市場にはあまり見られない大きな魅力です。
まず、通常の株式(Common Stock)は、私たちがイメージする一般的な株式(普通株式)です。株主として会社の重要な決定に参加する権利があり、配当は企業の業績次第で変動します。多くの投資家がまず投資するのがこのタイプです。
クラス株式という独特な仕組み
また、米国市場で特徴的なのが、クラス株式の存在です。同じ企業でも、議決権の有無などによって複数の種類の株式が上場していることがあります。
クラス株式の例
Alphabet(Google)の場合、議決権の有無でクラスAとクラスCに分かれています。株価にわずかな差がありますが、配当は同じです。一方、Berkshire Hathawayは、クラスAが主に機関投資家間で取引されるものに対し、クラスBが主に個人投資家間で取引されるものという位置付けで、価格差が1,500倍以上あります。複数のクラスがある銘柄に投資する際は、その違いをしっかりと確認しましょう。
なお、米国市場には
米国預託証券(ADR)があります。ADR は、米国企業以外の外国企業が米国市場で株式を取引できるようにする仕組みです。株主は米ドルで配当を受け取れるほか、株価変動益も通常の株式と同様に享受できます。情報開示レベルに応じてレベルⅠ〜Ⅲに区分され、
取引所上場型(レベルⅡ・Ⅲ)は通常株式と同等の開示義務を負うため、投資家は詳細な財務情報を英語で入手できます。幅広い国・業種の企業が利用しており、国際分散投資の選択肢として活用されています。
充実した情報開示
米国企業は四半期ごと(3ヵ月ごと)に詳細な決算を発表します。日本企業が半期・通期中心なのに比べ、より頻繁に企業の状況を把握できます。また、米国証券取引委員会(SEC)への報告義務も厳格で、投資家保護が徹底されています。
「でも、情報は全部英語でしょう?」と心配される方も多いでしょう。確かに原文は英語ですが、多くの証券会社では主要な米国企業の決算情報や市場分析レポートを日本語で提供しています。また、最近は自動翻訳の精度も格段に向上しており、英語が苦手でも概要は十分に理解できるでしょう。
米国株式の取引方法
米国株式の取引方法には、主に①海外委託取引、②国内証券との相対取引(仕切り取引)の二つがあります。
① 海外委託取引
「海外委託取引」は、日本の証券会社を介して、米国の取引所に発注する方法です。国内株式とは異なる売買手数料が適用されます(海外取次手数料+国内取次手数料)。
注文を出すと証券会社が米国の提携先に取り次ぎ、現地で取引が成立した日の翌営業日が国内約定日となるのが一般的です。NISA口座では税金がかかりませんし、特定口座(源泉徴収あり)で売買すれば、複雑な税金の計算や納付も証券会社が代行します。
② 国内証券との相対取引(仕切り取引)
「日本時間で米国株を買いたい」「この価格で確実に購入したい」という方には、証券会社との相対取引という選択肢があります。これは、海外委託取引のような市場での取引ではなく、証券会社を相手に直接売買する方法で、「仕切り取引」とも呼ばれます。
相対取引の大きな特徴は、日本時間で売買(約定)を成立させられることです。市場での取引と違い、証券会社が提示した価格で当日に売買が成立します。例えば、重要なニュースが出た場合など、「米国市場が始まる時間まで待てない。今すぐ買いたい/売りたい」と思ったときに、すぐに売買できるのが大きなメリットです。
この「証券会社が提示した価格」には、証券会社が在庫を保有することによるリスク等も考慮した手数料が含まれているため、別途手数料は発生しません。なお、すべての銘柄で相対取引ができるわけではなく、証券会社によって取扱銘柄は異なります。
米国株式はNISAで買える!
米国株式は、
①海外委託取引であれば、NISA口座で売買が可能です。
②国内証券との相対取引のNISA口座での売買可否は、証券会社によって異なりますが、みずほ証券では、NISA口座でも売買できます。
米国株式に関するよくある質問(FAQ)
Q. 最低いくらで始められる?
A. 意外と少額から始められる米国株投資
米国株式は原則1株から購入できます。
■1株から購入できて、少額から購入できる有名企業の例
(1ドル=150円で計算、株価は2025年7月時点の参考値)
- Coca-Cola:1株約71ドル(約10,650円)
- Ford:1株約12ドル(約1,800円)
- Bank of America:1株約48ドル(約7,300円)
※株価は常に変動します。実際の投資時には最新の株価をご確認ください。
ただし、証券会社や取引方法により最低取引単位は異なりますので、事前に確認しておきましょう。なお、みずほ証券の場合、海外委託取引と相対取引は10株単位から、国内委託取引は銘柄によって異なります。
配当はどう受け取る?
A. 配当金受取の具体的な流れ
米国株の配当は通常年4回支払われ、3ヵ月ごとに受け取れます。配当金にはまず米国で10%の税金が源泉徴収され、さらに日本でも20.315%の税金が源泉徴収されます。結果として、配当金の約7割程度が証券口座に米ドルで入金されます。
- ADR等、企業の登記国などによって異なる税率が課せられることがあります。
- 証券会社によっては、円貨で受け取れる場合もあります。
~税金の二重課税問題と解決策
配当金は、前述のとおり、二重課税状態となりますが、確定申告を行い外国税額控除を申請すれば、米国で支払った10%の税金の全部または一部が控除できる可能性があります。なお、NISA口座は外国税額控除の対象外です。
Q. 米国株の情報はどのように収集すればいい?
A. 日本語でも十分な情報収集が可能
「英語が苦手だから米国株は無理」と諦めている人もいるかもしれませんが、各証券会社は米国株に関する情報も充実させています。みずほ証券でも、決算速報や市場分析レポート、株価情報など、さまざまな情報をお客さま向けに提供しています。
そのほか、新聞社のウェブサイトや金融系ウェブサイトなど、インターネット上には米国株情報を発信するさまざまな媒体があります。
投資に慣れてきたら、企業の投資家向けサイト(IR情報)にも挑戦してみましょう。決算発表資料には多くのグラフや表が含まれており、英語が完璧に理解できなくても、数字やグラフから企業の状況を把握できます。また、最近は自動翻訳の精度が格段に向上しています。Google翻訳やDeepLなどを使えば、専門的な内容でもかなり正確に翻訳してくれます。完璧な翻訳でなくても、投資判断に必要な情報は得られるはずです。自分で情報収集するのは手間だ・難しい、と感じる方は、証券会社の担当者等に相談するのも良いでしょう。
Q.リスクはどう管理する?
A. 銘柄分散でリスクを軽減
個別銘柄のリスクは、複数、かつ、できれば異なる業種への分散投資である程度軽減できます。また、個別銘柄への投資が不安な場合は、米国株投資信託や米国株ETF(上場投資信託)に投資することで、手軽に分散投資できます。
つみたて投資も検討
米国株投資信託を定期的に積み立てることで、購入タイミングを分散でき、価格変動リスクを抑えられます。「株価が高いときにまとめ買いしてしまう」「安くなるとあわてて売ってしまう」といった失敗を避けたい方は、NISAのつみたて投資枠での投信積立も選択肢に加えてみてください。
Q. 為替スプレッドはどのくらいかかりますか?
A. 多くの証券会社で 1ドルあたり片道0.50円 が目安です。円貨決済の場合は「買付時と売却時」の2回、外貨決済の場合は「円⇄ドルの両替時」のみ発生します。取引額が大きいほど影響が大きくなるため、事前に手数料体系とスプレッドを確認しておくことをおすすめします。
Q. NISA口座で為替差益に税金はかかりますか?
A. かかりません。NISAでは株式の値上がり益・配当だけでなく、円貨決済で発生する為替差益も非課税です。一方、特定口座や一般口座では為替差益も課税対象になる点に注意してください。
Q. ADR(米国預託証券)とは何ですか?
A. 米国以外の企業が米ドル建てで株式を流通させるために発行する証券です。ニューヨーク証券取引所などに上場しており、ドル建て・年4回配当が多い・SEC開示義務があるのが特徴。英語のIR情報が整備されているため、日本の証券口座から通常の米国株と同じ手順で売買できます。