株式と債券は、どちらも企業などが資金を調達するために発行する金融商品ですが、その性質は大きく異なります。比較を始める前に、まずは株式と債券がそれぞれどのような商品なのか、基本から確認していきましょう。
株式とは
株式は、企業が事業資金を調達するために発行される、または既存の大株主などにより売出しが行われる証券です。株式を購入すると、その企業の一部を所有する「株主」になります。
株式は、債券などに比べてリスク・リターンが高い傾向があります。なぜなら、その企業の業績や事業を取り巻く環境の変化が、株価に直接的に影響を与えるためです。
投資した企業が成長すれば大きなリターンが期待できる反面、企業の業績不振や不祥事といったマイナス材料の影響も直接的に受けるため、リスクも伴います。
詳しくは、
「株式投資」とは?仕組みや魅力、リスクを解説をご覧ください。
債券とは
債券は、国や企業がお金を借りるために発行する借用証書のようなものです。債券を購入するということは、発行体(国、地方自治体、企業)にお金を貸す「債権者」になるということです。
投資家は、償還(満期)までの間、定期的に利子を受け取れ、償還時には貸したお金(元本)が返済されます。株式に比べて値動きが安定している傾向があるため、リスクを抑えて安定的なリターンを求める人に適しています。
詳しくは、
「債券」とは?仕組みや魅力、リスクを解説をご覧ください。
それでは、株式と債券の具体的な違いを、6つの観点から詳しく見ていきましょう。
①利益の違い
株式と債券では、得られる利益の種類が異なります。
株式投資の利益
株式投資で得られる可能性がある利益は、次の3つです。
●株価の値上がりによる売却益(キャピタルゲイン)
株価が値上がりした場合、株式の購入価格(取得価格)と、売却価格の差額が売却益となります。(原則、別途手数料と税金がかかりますが、NISA口座の場合、税金はかかりません。)
●株価の値上がりによる売却益(キャピタルゲイン)
株式を発行している企業が得た利益の一部を投資家に分配(還元)するお金です。企業によって、年に1 回や半年に1回といった頻度で配当金が支払われます。ただし、配当金は、企業の業績や方針により、増減 されたり、支払われなくなったりすることがあります。
●株主優待
企業によっては、株主に株主優待を提供します。株主優待の内容は、自社製品や商品券、ポイントなどを進呈する制度です。
株主優待とは?株主優待の起源、メリットから活用法まで簡単に解説! | みずほ証券
債券投資の利益
債券投資で得られる可能性がある利益は、次の2つです。
●発行体から受け取る利子(インカムゲイン)
債券を保有すると、国や地方自治体、企業などの発行体から定期的に利子を受け取れます。満期(償還日)を迎えると、元本として額面金額が償還されます。
●債券価格の上昇による売却益
債券は満期までの期間中に中途売却も可能です。購入時より高い価格で売却できれば、債券の購入価格(取得価格)と売却価格との差額が売却益となります。
②値動きの幅の違い(リスクの違い)
株式は、債券に比べて価格が大きく変動します。株価は日々、発行企業を取り巻く経済環境や業績等に対して、投資家の期待や不安を反映して大きく変動するため、大きなリターンが期待できる反面、大きな損失を被るリスクもあります。
一方、債券は株式に比べて価格変動が緩やかな傾向があります。発行体(国や地方自治体、企業)が破綻しない限り、満期時に投資元本が戻ってくるため、リスクを抑えた運用が可能です。
株価はなぜ変動するのか
株価は、企業の業績、将来性への期待、景気の動向、政治や社会情勢の変化など、多くの要因によって日々変動します。これらの情報が投資家の心理に影響を与え、売りたい人と買いたい人の需給バランスが変化することで、価格が上下します。
債券価格はなぜ変動するのか
債券価格は、主に金利変動の影響を受けます。一般的に、市場の金利が上昇すると、既に発行されている低い利子の債券の魅力が薄れ、価格は下落。逆に、金利が下がると、既存の債券の価値が高まり、価格は上昇します。また、発行体の信用度(倒産リスクなど)も価格に影響します。
③投資元本の増減の有無
株式は、売却した場合、株式の購入価格(取得価格)と、売却価格の差額で投資元本が増減します。債券の場合、満期まで保有すれば投資元本は戻ってきますが、満期前に売却したり、発行体が債務不履行に陥ったりした場合はこの限りではありません。
株式への投資元本が増減する可能性
株価は、主に市場の需要と供給によってリアルタイムに変動し、株価が購入時よりも値上がりすれば投資元本は増え、株価が購入時よりも値下がりすれば投資元本は減少します。また、投資先の企業が倒産すると、株式の価値はゼロになり、投資元本が戻ってくる可能性は低いです。
債券への投資元本が増減する可能性
債券は、満期まで保有すれば、発行体が破綻しない限り、投資元本はそのまま戻ってくる商品です。ただし、満期前に売却する場合、そのときの市場価格での取引となるため、投資元本が増える可能性もあれば減る可能性もあります。
また発行体(国や企業)が破綻した場合、投資元本や利息の支払いが滞ったり、全く支払われなかったりする可能性があります。ただし、債券保有者は債権者として株主よりも優先的に返済を受ける権利があるため、企業破綻時でも株式投資と比べて一定の資金回収が期待できる場合もあります。
④最低投資額の違い
投資にはどれだけの資金が必要なのか、気になる方もいるかもしれません。株式と債券では、始めるために必要な金額が異なります。
株式の最低投資金額
日本の株式は原則100株単位(単元株)で取引されます。株価1,000円の株式であれば最低10万円、株価5,000円の銘柄であれば、最低投資金額は50万円です。1株が数万円する銘柄もあり、複数銘柄に分散投資しようとすると、相応のまとまった資金が必要です。
米国株の場合は、金融機関によって取引単位が異なります。例えば、1株単位で売買できる証券会社では、株価$200の株式で、為替レートが1ドル=150円の場合、最低投資金額は3万円です。
なお、証券会社によっては、単元未満株(取引単位未満の株式)の売買ができる場合もあります。
債券の最低投資金額
債券は個人向け国債のように1万円から購入できるものもあり、株式に比べて少額から投資を始められる場合があります。ただし、社債などでは、銘柄によって最低投資額が数十万円以上になることもあります。
⑤満期の有無
株式と債券の大きな違いの一つは、満期があるかどうかです。
株式には満期がない
株式には満期がなく、投資家は自身の投資目的や資金需要に応じて、売却のタイミングを決められます。そのため、株式の場合、数十年といった長期的な投資も、自身の判断次第で可能です。
債券は満期がある
債券には満期が設定されており、満期が来ると投資元本が返済されます。
債券の満期は通常、発行時に決められており、数ヵ月の短期債券から20年を超える超長期債券までさまざまです。満期が決まっているため、将来の資金需要が明確な場合の投資に適しているといえるでしょう。
満期まで持たず途中で売却することもできますが、その場合は市場価格での取引となり、元本割れのリスクがある点に留意しましょう。
⑥買付・換金までの日数の違い
資金の流動性、つまり現金化のしやすさや受渡日までの日数(売却資金を受け取れるまでの日数)にも違いがあります。株式と債券を比較してみましょう。
株式の場合
株式は証券取引所が開いている時間帯であれば、リアルタイムで売買が可能です。国内株式の場合、注文が約定すると、受け渡しは通常2営業日後に行われます。
株式は、投資商品の中では、売却の約定から受け渡しまでの日数が比較的短いため、急な資金需要にも対応しやすい資産といえるでしょう。ただし、銘柄によっては流動性が低い(出来高が少ない)銘柄もあり、注文を出してもすぐに約定しない(もしくは約定までに時間がかかる)ケース、希望の値段で売却できないケースがあることに留意する必要があります。
債券の場合
債券も店頭で売買が可能ですが、購入時よりも信用力が悪化した発行体の社債や外国債券では、大幅に価格を下げないと売却できないケースもあるため、注意が必要です。
株式はNISAの成長投資枠で購入できますが、債券はNISAでもiDeCoでも購入できません。
これまで紹介してきたように、株式と債券は異なる特性を持っています。まずは自身の資金をどのように運用していきたいのか、どの程度リスクをとってリターンを狙いたいのか、投資期間はどのくらいか、など投資目的等を整理してみましょう。そのうえで、債券で安定的に運用していきたい資金、株式で積極的に利益を狙っていきたい資金など、色分けをしてみるとよいでしょう。
なお、市場の急変時など、株式と債券に分散投資をしてもセオリー通りの動きにならないケースもあるため、投資は余剰資金で行うよう心がけてください。
Q NISAで買うならどちらが良い?
A 株式はNISAの成長投資枠で購入できますが、債券は成長投資枠でもつみたて投資枠でも購入できません。NISAを活用する場合は、対象商品である株式や投資信託への投資を検討しましょう。
Q 配当金・利子は毎月もらえる?
A 株式の配当金は年1〜2回、債券の利子は年2回が一般的です。なお、配当はすべての企業が実施しているわけではありません。また、仮に実施していたとしても、業績や方針によって支払われなくなる可能性もある点には注意してください。
Q 配当と利子はどっちが多くもらえるの?
A どちらが多くもらえるかは、個別の銘柄や保有金額、そのときの業績や金利水準によって変わるため、一概には言えません。配当は発行体が発表している予想配当や過去の実績が目安になりますが、将来の支払いを約束するものではない点に注意が必要です。
Q インフレ対策にはどちらが有効?
A 一般的に、株式の方がインフレに強いとされています。企業はインフレに応じて製品・サービス価格を上げることができる場合があり、その結果、株価も上昇する可能性があります。一方で、債券の利子は原則固定されているため、インフレが進むと実質的な価値が目減りするリスクがあります。
Q 税金面ではどちらが有効?
A 基本的に、利益に対する税率はどちらも同じ(20.315%)です。ただし株式の場合、NISAの成長投資枠を活用して購入すれば、利益が出ても非課税となります。
Q リスクが低いのは債券と株式のどちら?
A 基本的には、債券の方が株式よりも価格変動リスクが低いとされていますが、発行体の信用リスクや金利変動リスクも存在します。例えば、信用リスクが高い代わりに金利が高い「ハイイールド債」など、リスクの高い債券も存在します。まずはご自身の目的やリスク許容度に合わせて、一般的な債券から検討してみるのが良いでしょう。